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2020-10-30 00:00
核兵器禁止条約発効と日本のあるべき方策
加藤 成一
元弁護士
あらゆる核兵器の開発や実験、生産、保有、使用を許さず、核で威嚇することも禁じる「核兵器禁止条約」の批准国・地域が10月24日発効条件の50に達した。90日後に当たる来年1月22日に発効する。同条約は、国連加盟国の6割に相当する122か国の賛成で2017年7月に採択された。「核不拡散条約」(NPT)とは異なり、核兵器そのものを違法・不法とみなす国際条約である。
同条約が発効しても、核保有国など、条約に署名・批准しない国に対し法的拘束力はない。しかし、「核兵器は違法・不法」との新たな国際法規範が生まれたことにより、核保有国においても核兵器の使用等はより困難になるから、非核保有国にとっては歓迎すべきである。ただ、核保有国である米英仏・ロシア・中国・北朝鮮・インド・パキスタン・イスラエルなどは署名も批准もしていない。また、米国が提供する「核の傘」(「拡大核抑止」)に安全保障を依存している日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)諸国も署名・批准していない。
広島・長崎という世界で唯一の戦争被爆国である日本が署名・批准しないことについては、かねてより被爆者団体や日本共産党などの一部野党から日本政府に対して厳しい批判が加えられてきた。広島・長崎の被爆者らの「核廃絶」への思いは十分に理解できる。しかし、もし日本が同条約に署名・批准した場合の安全保障上の危険性も同時に検討する必要がある。まず、同条約に上記の核保有国が一切署名・批准しない理由は、核を放棄することにより「核抑止力」を完全に喪失することの安全保障上の危険性と、核を保有することによる国際社会における優越的立場の喪失である。そして、上記の日本など、米国が提供する「核の傘」(「拡大核抑止」)に安全保障を依存している国々が同条約に署名・批准しない理由も、「核抑止力」の喪失を恐れるからである。
もし、日本が米国との安保条約下において、「核兵器禁止条約」に署名・批准した場合は、日米同盟における信頼関係が著しく棄損され、今後日本が安全保障を米国の「核の傘」(「拡大核抑止」)に依存することが不可能又は著しく困難となろう。なぜなら、日本が同条約に署名・批准して米国の核を否定しながら米国の核に依存することは矛盾だからである。もし、そのような事態となれば、核保有国である北朝鮮や中国等の核脅威を考えれば、日本は独自に核抑止力を構築する必要に迫られるという自家撞着に陥る。このように、日本が「核兵器禁止条約」に署名・批准することは、日本の安全保障を危険に曝すことになるのである。したがって、今後の日本外交としては、「世界で唯一の戦争被爆国」として、核兵器による大量殺戮の悲惨さを経験した立場から、単に「核軍縮条約」締結のみならず、核兵器使用を事実上不可能とする、「核兵器不使用条約」締結に向けて、核保有国に対しても、国連等で最大限の説得力を発揮し、世界平和と人類社会に貢献すべきである。
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