ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2020-11-20 00:00
大阪都構想に示した大阪市民の叡智
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
およそ真っ当な政治家であれば一度民意を訊いた政治的イシューについて再度住民の意思を尋ねることはしないであろう。それなのに莫大な時間と予算を浪費し、かつ住民同士の軋轢を増す愚策を重ね、しかも全く同じ結果を招いた。言わずもがなの大阪都構想、厳密には大阪市を廃止して四つの特別区に再編するというものだったが、11月1日に行われた住民投票の結果、反対が賛成を2万票近く引きはなして勝利し、大阪市はかろうじて生き残ることとなった。太閤殿下以来の浪速の大阪が辛うじて継続したこと、まずは大阪市民の叡智をたかく高く評価したいと思う。
それにしてもかくも無益な争論をやり続けた大阪維新の会は、大阪市長や大阪府知事、それに外から彼らをたきつけた政治家や評論家等々これに政治的に関わった人々はそれぞれの立ち位置で居ずまいを厳に正すべきである。そもそも大阪がその政治的・経済的地位を減じていったのは、東京に徐々に栄養を吸い取られるように経済的・政治的地位を喪失していったためである。その最たるものが東海道新幹線だ。東京と大阪が2時間半で結ばれることで、上りに乗る乗客の数が下りに乗るそれよりほんの数人多かったばかりに、これが開通以来半世紀余を経る中で圧倒的な差異を現出させてしまったのであると考えている。その上り列車の車中には、時折大阪生まれ大阪育ちの大企業本社が大阪から東京にそっと移動し、東京大阪間の格差を乗数的に拡大させたのである。にも拘らず、大阪に残った政治・経済界の指導者たちは今またJR東海がすすめるリニア中央新幹線の大阪までの早期着工を一生懸命に促している。ますます、東京のみならず名古屋・横浜に対してまで不利な競争に巻き込まれることであろうと、筆者は同情しているのだがどうであろう。
ところで、この度の再度の住民投票では改めて前回反対を決め込んでいた公明党が賛成に回った。にも拘らずそれでも結果は変わらなかった。公明党が参加した理由は、大阪都構想に反対すると維新の会が公明党候補への対抗馬を擁立すると圧迫したことへの回答であったと聞く。かくて公明党もまた敗者に連座し、その見識が疑われなければならないことになった。
これを機に大阪市と大阪府は、夢洲に計画中のインモラルのIR構想の断念、またもはや柳の下に不在のドジョウを探すような時代遅れの万博開催の再検討など深慮と遠謀を期待したいものである。大阪府・市がこの住民投票結果を契機にして、もう一度東京一極集中を打破する日本第二の指導的都市として立ち直って欲しいものである。
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
公益財団法人
日本国際フォーラム