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2020-12-01 00:00
「桜を見る会」を巡る刑事責任と道義的責任
加藤 成一
元弁護士
最近の大手新聞各社の報道によれば、東京地検特捜部は、安倍前首相主催の「桜を見る会」前夜祭におけるホテル費用補填疑惑に関する弁護士集団からの告発を受けて、ホテル側発行の明細書や領収書等を入手し、安倍事務所側の公設秘書や後援会員など関係者らの事情聴取等を行い、公選法違反(「寄付」)や政治資金規正法違反(「不記載」)容疑の有無につき捜査を進めている模様である。
11月25日配信の「朝日新聞」の調査によれば、2015年から2019年までの5年間のホテル費用総額は2343万円で、会費は1428万円、安倍事務所側の費用補填額は916万円にのぼっている。仮に、これが事実だとすれば、安倍前首相の国会における「前夜祭の費用はホテル側が設定し参加者が支払い、安倍事務所側は補填していない」「事務所や後援会の収支は一切ない」旨の答弁はいずれも客観的事実に反し、公選法違反(「寄付」)や政治資金規正法違反(「不記載」)の可能性が生じてくる。
ところで、公選法違反の「寄付」が禁止される趣旨・目的は、選挙の公正を担保するためである。したがって、同法違反の「寄付」が成立するためには、安倍事務所側において、選挙のために「寄付」した、即ち選挙のために「費用補填」したとの認識(「故意」即ち「罪を犯す意思」刑法38条)が必要である。そして、参加した後援会員側においても、会費を超える「寄付」を受けたとの認識が必要である。しかし、そのような「認識」の証明はいずれも証拠上困難であるから、本件費用補填について、安倍事務所側に公選法違反の「寄付」は成立しないと思料される。これに対して、政治資金規正法違反の「不記載」については、発生した収支につき、収支報告書に記載すべき義務があるのに記載せず、又は虚偽記載をした場合に成立する(政治資金規正法24条)形式犯に近く、公選法違反の「寄付」よりも証明のハードルが低いため、安倍事務所側の「会計責任者」については有罪の可能性があろう。
しかし、仮に、公選法違反(「寄付」)や政治資金規正法違反(「不記載」)につき安倍前首相自身に刑事責任はないとしても、前首相として、公設秘書らに対する管理監督責任や、国会における客観的事実に反する答弁など、政治的・道義的責任は免れないであろう。
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