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2020-12-11 00:00
カーボン・ニュートラルへの道
船田 元
衆議院議員
菅総理は就任後初の所信表明演説で日本が2050年に「カーボン・ニュートラルを目指す」と宣言した。「カーボン・ニュートラル」とは地球温暖化の主因であるCO2の排出量を、トータルでゼロにするという意味だ。バイデン氏が大統領になれば、トランプ大統領が離脱を宣言した「パリ協定」に復帰するばかりでなく、温室効果ガスの大幅な削減を打ち出す可能性が高く、そうなる前に日本が先手を打って、国際世論にアピールする必要性を察知したためだろう。CO2排出量をトータルでゼロにするということは、排出量から森林が吸収するCO2の量を差し引くということを意味する。実際の量は測れないので理論値で推定するしかないが、意識的に森林を守ることが目標達成には大切な手段となる。また温暖化ガスの排出権取引きという手段もあるが、取引きのための市場が未整備であるだけでなく、「排出できる量を買う」という行為は、CO2をゼロにするという理念とは相容れないものがあり、その活用には疑問符がつく。
日本は高度経済成長期に酷い公害に悩まされた。その反省から環境技術を磨き、一時は世界でも有数の環境大国、環境技術大国になった。ところが2011年の東日本大震災で原発の稼働がゼロとなり、安全基準の厳格化や立地地元の反対などにより、再稼働が一部にとどまっている。それを代替すべき再生可能エネルギーは、場所の制約や技術開発の遅れ、送電網の脆弱さから、拡大が遅れている。コストが比較的低い石炭火力で電力不足の急場を凌いで来たが、環境NGOなど国際社会から非難されている。
我が国のCO2排出構成は電力(エネルギー転換)は40%、産業部門が25%、運輸関係が17%、残りが家庭などからの排出である。最も排出量の多い電力部門を見てみると、日本の現在の電源構成(エネルギーミックス)は、化石燃料(石炭、LNG、石油)75%、原発6.5%、再生可能エネルギー(水力含む)18.5%となっている。2030年度には安全性が確認された原発20~22%、再生可能エネルギー22~24%、残りを化石燃料で賄うことが、エネルギー基本計画で見込まれている。これにより2030年のCO2排出量を2013年に比べて26%削減することを表明したが、削減幅が小さ過ぎると、これまた国際世論から批判を受けた。
2050年にカーボン・ニュートラルを達成するためには、電力需用量は全て再生可能エネルギーと、安全が確認された原発で賄わなければならない。また産業部門や家庭での省エネや脱炭の徹底、電気自動車(EV)や水素エネルギーの活用が不可欠である。また天候などに左右される再生可能エネルギーの安定供給のために、大容量の蓄電設備の開発など、多くの課題が山積している。これに対しては不退転の決意で、そしてまさに国家プロジェクトとして取り組まなければならない。
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