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2007-09-07 00:00
核軍縮への高まる期待
堂之脇光朗
日本紛争予防センター理事長
先月末に札幌で開催された国連軍縮会議に出席する機会に恵まれた、本年5月のウィーンでの2010年NPT運用検討会議第1回準備委員会が議題の採択、建設的な実質討議などで成功裏にスタートを切ったことから、核軍縮への高まる期待が示された会議となった。この準備委員会を議長として成功に導いた天野之弥ウィーン国際機関日本政府代表部大使の外交努力は各方面から高く評価されているが、同大使は決裂を回避できたのは綱渡りのようなものであったとして、過度の楽観論をいましめていた。
高まる期待感のもう一つの根拠となったのは本年1月にシュルツ、ペリー、キッシンジャー、ナン4氏がウォール・ストリート・ジャーナルの紙上で行ったアメリカは核兵器廃絶のために大胆な、新しいビジョンを示せとの呼びかけであった。札幌会議には国務省のフォード核不拡散特別代表も出席してアメリカの核の傘はこれを必要としている同盟国もあり、核不拡散にも役立っているとの趣旨の演説を行ったが、上記の4氏の呼びかけへの米政府の立場についての質問には、同代表が3月にアヌシーでのセミナーで配布した論文をよく読んで欲しいと答えていた。同論文はNPT条約が掲げる核兵器廃絶義務に米政府はコミットしており、それが実現可能となる国際環境の整備が先決であるとしながらも、米政府は2001年の核戦略レビューの結果核兵器への依存度を減らす方針をすでに採用しており、他の核兵器諸国もこれを見習って欲しいとする内容のものである。
相手国の戦力破壊(カウンター・フォ-ス)が目的であればトマホークなどの精密誘導兵器が登場してきた結果、核弾頭を用いなくても通常兵器で目的は十分に達せられ、一般民間の被害も少なくて済むとの議論は1994年1月にワシントン・ポストでポ-ル・ニッツェ氏が提起して以来核兵器不要論の有力な根拠となっている。核兵器の唯一の「とりえ」は大都市などに対する大量破壊(カウンター・バリュー)能力なのである。
筆者からはフォード代表に対してアメリカの核の傘を必要とする同盟国もあるから核抑止力は必要とのことであるが、同盟国が必要としているのは核兵器などの大量破壊兵器による脅威に対抗する「抑止力の傘」であり、効果的に機能するのであれば何も「核抑止力」である必要はなく「通常兵器抑止力」であっても差し支えない筈であると指摘したところ、そのような議論が深まることを期待しているとのことであった。
また、フォード代表は最近ではアメリカはRRW(核弾頭を信頼性のある弾頭で置き換えるプログラム)と称して新規の小型核兵器の開発、配備を進めているのではないかとする風評があるようだが、RRWはあくまでも既存の核弾頭の取替えであり、新規の小型核兵器の開発、配備は一切ないと強調していた。これは、最近では地中貫通型小型核兵器などの開発予算が米議会で認められていないことからみても、その通りであろう。
もちろん、核軍縮の前途はカット・オフ条約締結交渉の開始、CTBT条約の早期発効など、多難に満ちた道のりであることに変わりはないのであるが、上に述べたように少なくともアメリカは核兵器への依存度を減らす方針であることが明確になってきている。核兵器のない世界へ向けての確かな手がかりであり、歓迎すべきことである。
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