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2020-12-19 00:00
コロナで明け、コロナで暮れる、この一年
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
いよいよもってウイルスが三度目の猛威をふるいだした。迎え撃つ政府は、どうやら早くも周章狼狽だ。まるで唯々諾々と敵の為すがままにウイルスの跋扈を許している。ことのほか呆れてしまうのは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いの総指揮官がなにをしているのかまるで見えないことである。インパールを嚆矢として、ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、レイテとあの戦争の歴史の中でやらかした数々の失敗を思うにつけ、過去への懺悔や反省は殊勝にしても未来への改善には結びつかない国民性なのか、コロナ戦争もまた日本は連戦連敗を示している。相手は核爆弾でも弾道ミサイルでもない、電子顕微鏡下でしか見えない程の極微のコンマ1ミクロンに及ばず一細胞にすらなり得ないウイルスだ。知性も無ければ意思も無い。それを相手に我が政府は散々に手こずっている。
今起こっている3番目の流行状況を、これは「第3波」であると菅政権は認めていない。世論に押されて「GoTo」政策を凍結した以上、事実上、第3波の存在を認めたようなものだが、政権が「売り」にした「GoToトラベル」やら「GoToイート」やらの息の根を止めないために、感染拡大原因とだけは認めないようだ。これらが原因でない証拠は、「GoToトラベル」の補助金を受けて旅行に行った4000万人もの人々の中で発症者が数百人程度しか居ないからだという。たしかに4000万人は旅行取扱業者が受けた処理数から割り出した延べ申し込み人数であろうから根拠はある。しかし、参加者数ではなくこれは延べ宿泊数であろうから、2泊3日なら2000万人、4泊5日なら1000万人に母数は減る。
そして何より、政府肝煎りの大盤振る舞いの補助金付き遊興イベント、一年になんなんとするこの鬱陶しい毎日にあって、一気に晴れた梅雨の晴れ間の気分、これが旅に行く者をまた行かない者すらも「祝祭」気分に解放させたのは間違いない。かくて緩んだ気分が感染恐怖を度忘れさせる効果を招いたに違いない。本来ならインバウンド外国人客を3200万人も迎えて我が世の春を謳歌していた観光業者が一気に氷河期に入ったこのアクシデントにあって、自民党幹部たちは救済して上げたくてしかたがないのだろう。それにしても「GoTo」は感染が消滅してからというのが知性ある政府の取るべき政策ではなかったのか。それを出発前に感染の有無を調べる検査も無しに野に放った結果がこの惨状を招いたと言われても仕方あるまい。
すべて国民は「物事を科学的に論理的に考え、かつ行動すること」、まして政治は「理性に基づいて立案しそれを誠実に実行する」、これこそが、あの無謀な戦争を反省した戦後の一億総懺悔の目標であり結論であり、かつ「文化国家」に生きるものの規範とされた。それにもかかわらず漫然と政策決定する菅政権の責任は重い。
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