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2021-01-28 00:00
同盟、国際協調重視のバイデン外交始動
鍋嶋 敬三
評論家
菅義偉首相が1月28日未明(日本時間)、バイデン米大統領と電話会談した。日米同盟のさらなる強化で一致、大統領は日米安全保障条約第5条の尖閣諸島への適用を含む日本防衛への米国の揺るぎないコミットメントを表明するとともに、日本に対する拡大抑止の提供も再確認した。これは中国をはじめとする安全保障脅威国に対する明確なメッセージとして高く評価したい。「自由で開かれたインド太平洋」の概念を維持し、そのために米国の地域でのプレゼンスが重要であり、日米豪印の4ヶ国(QUAD)の協力推進、北朝鮮の非核化への連携も合意した。国際社会共通の課題である気候変動問題や新型コロナウイルス対策での協力も一致した。バイデン政権発足(1月20日)からまだ一週間だが、外交政策で見えてきたのは第一に同盟関係重視、第二に国際協調主義への回帰、第三に中国への厳しい姿勢である。一、二は伝統的なものであり、三はとりあえずトランプ政策の継続である。日本は日米同盟を揺るぎないものにするために、早期に首相訪米を実現し積極的にバイデン政権をリードして新戦略の構築を支える時である。
米議会上院は国務、国防など主要閣僚の指名承認を異例のスピードで決めた。野党になった共和党の多数が指名議決などで賛成票を投じたからだ。トランプ支持派による議事堂乱入事件でのトランプ弾劾裁判が決まり、米国の新型コロナウイルスの感染者が2500万人、死者が第二次大戦を上回る42万人(1月27日現在)という歴史的な異常事態に政策遂行を急ぐ超党派の合意ができた。バイデン大統領は1月26日、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長との電話会談でロシア問題などを協議、集団的自衛権の行使を決めている条約第5条の重視を伝えた。これはウクライナにみられるロシアによる侵略ー領土併合を恐れる加盟国の不安を解消するためだ。オースティン新国防長官が真っ先に電話会談したのも同事務総長であり、バイデン政権の安全保障上の最優先課題が同盟関係の安定的維持にあることを示す。
オースティン長官は国別では英国に次いで日本の岸信夫防衛相と会談した(24日)。この順位は米国の日本重視の表れだ。米国防総省の発表によると、国防長官は「尖閣諸島への日米安全保障条約第5条適用を確認」、「インド太平洋の安全保障に果たす同盟関係の役割に対する日本の貢献の強化」を岸氏に促した。地域の安全保障について新政権の日本への期待が大きいことをうかがわせる。茂木敏充外相は27日朝、指名承認を受けて6時間後のブリンケン新国務長官と電話会談した。外務省の発表によると、外相からは米政府の日米安保条約に基づくコミットメント、尖閣諸島へ第5条の適用についてのコミットメントに感謝した。日本の発表にはないが、米国務省の発表ではブリンケン長官は「日米韓協力の継続の重要性」を強調した。「日米韓協力」は米韓外相電話会談でも強調しており、日韓関係の極度の悪化が米アジア戦略へ悪影響を与えているとの強い懸念が米国にあるためだ。
バイデン大統領は就任演説で「同盟修復、世界に関与」を宣言し、気候変動対策のパリ協定への復帰、世界保健機関(WHO)脱退の撤回などトランプ政策転換のため17文書に署名、多国間主義、国際協調路線を始動させた。米国のリーダーシップを取り戻せるか、世界が固唾を飲んで見守っている。対中国政策ではホワイトハウスのサキ報道官が25日の記者会見で「過去数ヶ月のと変わらない」としながらも「新たな米国のアプローチが必要だ」との認識を示した上で「戦略的忍耐」に言及した。バイデン氏が副大統領だったオバマ政権で「戦略的忍耐」は北朝鮮の核・ミサイル開発を黙認する結果を招き、政策の失敗をトランプ政権から厳しく批判された代物である。オバマ政権の対中融和政策が中国の軍事的、経済的な拡張主義を許したと批判されるだけに、バイデン政権の中国政策の真意を早期に確かめ、融和策に舞い戻らないよう外交的な働き掛けを強めなければならない。
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