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2021-01-30 00:00
核兵器禁止条約の発効に思う
佐藤 七海
NPO
1月22日の核兵器禁止条約発効は思いの外日本では話題にならなかった。国際条約は批准国が明らかになったあとは話題としては旬をすぎるため仕方がないのかもしれない。しかし、良く言えば理想的な、悪い言い方をすれば夢想的な条約が現実に効力を持ったという事実自体がもつ意味を、肯定派・否定派、双方が真剣に考える必要がある。 核兵器禁止条約には、非核保有国しか批准していない。五大国や、イスラエルなど本来批准すべき核保有国は当然参加していない。これらの国は、安全保障上の信念により核兵器開発を行ってきており、核保有国が持つ異質な外交力を実感しているからだ。
逆にこの論理は非核保有国の核保有への挑戦を勇気づけるものでもある。日本は核の傘の利益を享受しまた核保有国の論理を肯定しているために核兵器禁止条約を批准していないが、その考え方では核拡散が徐々に進むことをインドや北朝鮮などのNPT枠外の諸国が証明している。南アフリカやリビアのような例もあるが、基本的には漸増する方向であろう。そういう意味では、一見非現実的な理想を掲げる核兵器禁止条約が、有効な国際条約となったことは、歴史的な意義があるのではないか。 現実に目を向ければ、核軍縮が進むようには到底見えない。米中ロは、中距離核戦力などを始めとして核兵器をいかに投射するか開発を競っている。北朝鮮も核保有国の立場を既成事実化している。
対して、通常兵器しか持たない日本は、その強大な国々を前に、敵基地攻撃能力やミサイル防衛システムも十分に整備できていない。はたして、日本の防衛政策は維持可能性があるといえるだろうか。核保有国でもないのに核保有国の論理に乗っている日本の脆弱性がそこにはある。そう考えれば、核の傘を前提に自国の安全保障を規定することは健全とは言えないのではないか。論理的に考えれば、日本も核を持つ。もしくは、核兵器禁止条約を全世界に批准させていくことで自国の安全を確かにしていく。そのどちらかであろう。だが、唯一の戦争被爆国としてヒロシマ・ナガサキの悲惨さを訴える一方でアメリカの核抑止力に依存する日本の長年の自家撞着はこの問題がそのどちらを選んでも苦しい道になることがあきらかであることを示している。
実際にはどちらも選ぶことはできないだろう。だが、なにもできないということではない。せめて理念的に国是に合うほうを助勢していくべきではないだろうか。 実際、今回の核兵器禁止条約の主要な参加国はもともと核兵器の保有、使用、実験を禁止する非核地帯の地域国だ。地域を限定すれば核兵器禁止条約が実質的になっていることは重要な意味を持つはずである。8月にはNPT核不拡散条約の再検討会議、そして時期は未定だが、規定上核兵器禁止条約締約国会議が1年以内に開かれる。これらの場で日本政府が核兵器禁止条約を肯定的に言及することくらいはできるのではないか。
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