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2021-02-13 00:00
川淵氏辞退に見るネット世論の時代
大矢 実
日本国際フォーラム研究員
この2日で東京五輪組織委員会の会長人事において、目まぐるしい情勢の変化が起こった。森氏が辞任の意向を示したのが11日昼、川淵氏が後任であることがわかったのはそのあとまもなく、そして夕方には川淵氏が森氏を相談役にする意向を示した。森氏を相談役にするところにまで気を使うというのは、組織委の実質的な運営を行いたい川淵氏の強い意欲が現れたものであろう。しかし翌朝には、川淵氏は一転して会長就任の意向を翻し、組織委の合同懇談会で川淵氏の会長就任は正式に見送られた。
リアルタイムで感じたのは森氏を相談役にするという一報が出て以降、TwitterなどのSNSで一挙に川淵氏に対する風向きが変わったことだ。新会長が川淵氏に急遽決まりそれが森氏の事実上の後継指名によるものだとわかった時点で批判する声が出始めていたが、森氏を相談役にするというニュースが出たことで森氏と川淵氏を等号で結ぶ認識が一気に広がったのだろう。川淵氏会長就任論への批判が猛烈に広がった。この一連の出来事が示唆することは、世論を映す媒体がインターネット・SNSに移ったということと政府がネット世論を注視し即応体制を取っているということだ。
今回、新聞もテレビも川淵氏を追い込むほどの本格的な攻勢をするには至っていなかった。それに対してネット上では前述の通り刻々とネットユーザーたちの心理の変化が映し出され「世論」が形成されていった。それに対処するように一夜で川淵案ではない案が準備良く現れたことは、政府-組織委周辺がネットの世論動向を注意深く観察しており、川淵会長案への拒絶反応が大きければ即座にそれに差し替えて別案を出す次善策も用意していたことを暗示している。川淵氏案という観測気球を上げたかもしくは森氏側の動きを様子見していただけか、いずれにせよ初動にネット世論がどう反応するか、第二案を準備しつつ政府が試していた可能性は否定できない。
世はたしかに以前からネット世論の時代になりつつあった。米大統領選挙も日本の総選挙も世論調査よりもSNSの投稿分析のほうが得票数を正確に当てられるようになってきていた。最近でもTwitter上での反対運動の高まりに与党が腰砕けになった例もあった。そのようななか、政府が露骨にネット世論に即応したという今回の「実績」は、森会長が辞任したことそれ自体よりもより大きな意味を持ったのではないか。この影響や功罪の論は別の機会に譲るとして、今や専門家も一般人と同じステージであるネットで、伍して情報発信するのが当たり前の時代だ。ここe-論壇のみならず、ネット上に持論を表現する場はいくらでもある。ネットの意見なんてろくなものではない、床屋政談のほうがまだマシだと思っておられる方も悪く言えば「言ったもん勝ち」の言論空間をリードするためにインターネット上で発信してはいかがだろうか。
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