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2021-03-19 00:00
(連載2)発露するバイデン政権の「人道的介入主義」
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
省の長官(Secretary)でも出席できないものが殆どであるのに、国務省の傘下にあるUSAIDの長官(administrator)が出席できるようになった。これは、「アメリカの海外援助を国家安全保障政策や外交政策と同格に扱う」ということであり、歴代政権もぼやかしてきたことを初めて明確にしたといえるのである。私たちは海外援助と言えば、井戸を掘ったり、農業技術の支援をしたり、学校や道路、橋を建設したり、ということをイメージする。困っている人たちを助ける、ということを想像する。
しかし、アメリカの海外援助はそうではない。ただでお金をくれてやるような無駄なことはしない。海外援助を「ターゲットにした国の体制転換のために」使うのである。そのために、人道的介入主義派のリーダーであるサマンサ・パワーをUSAID長官に持ってきた。更に、サマンサ・パワーがホワイトハウスでの国家安全保障会議に出席できるようにした。バイデン政権は海外介入をやる気満々だ。
現在、新型コロナウイルス感染拡大が問題になっている。バイデン政権は感染症対策のために、このUSAIDの海外援助を利用しようとしている。中国が世界各国に対して支援を行っているが、アメリカもそれに遅れてはならじ、ということであろう。しかし、新型コロナウイルス感染拡大が一番深刻なのはアメリカである。「まずは自国のことからしっかりやり、そのためにUSAIDの予算を削減して国内対策に回せ」と私は考える。
人道的介入主義とネオコンは同根である。「アメリカの理想や価値観を世界中に広めれば戦争は起きない、平和な世界になる」という何とも思い上がった思想を共有している。そのためにターゲットにされる国にとっては厄災である。バイデン政権誕生を喜んでいる人間はこれから起きる災難から目をそらしてはならない。(おわり)
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