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2021-03-27 00:00
(連載2)民主主義を支える力 ~琵琶湖淀川水系河川治水問題を例にとって~
畑 武志
元大学教員
しかし、今回の整備計画変更案では大戸川ダムの新設に頼る案が提示された。1992年に確保された琵琶湖における上述の膨大な洪水調節容量がどのように活用されたかについての明確な説明がないまま、従来通りの運用による下流洪水対策が示されているだけである。関係府県におかれてはダム建設負担金を計上される前に、各先達の努力で生み出された膨大な洪水調節容量がどのように活用され、淀川下流の洪水防御に活かされているか詳細な検討が必要であろう。
瀬田川下流の天ケ瀬ダム総合開発事業は間もなく完成するが、下流への放流可能量が大きくなり、琵琶湖の水位管理はさらに進展させられる。瀬田川洗堰と天ケ瀬ダムの連携操作による、より近代的な洪水調節が重要になってくる。降雨流出予測制御や農業用ダム・ため池の治水利用等で優秀な頭脳が集中する水文水資源学会などの学会へダム建設費の1/10いや1/100程度でも計上して研究依頼をされるなら、コイ科魚類の産卵時期に琵琶湖の水位低下を避けるなど生物にも優しい水管理と洪水調節を両立させ、さらに異常渇水にも対応した管理操作法をダム建設よりもはるかに短い期間で開発し、従来の単純な琵琶湖利用ではなく、年間の繰り返し利用によって下流の洪水安全度と琵琶湖を含めた渇水災害に対する安全度を大きく高めることができるだろう。既設条件下での最適管理は典型的な問題であり、解決が難し過ぎるような課題ではない。現在の洗堰操作規則を変えることなく、その条件下で、琵琶湖生物環境等にも配慮した水管理を確立できれば、世界湖沼会議で世界をリードしてきた琵琶湖研究をさらに進めて、その点でも世界に役立つ模範を作ることができるだろう。優秀な技術者、研究者を擁する国土交通省も一体となって推進されることが期待される。
20年も昔のことではあるが、イギリス・テームズ川河川工事において工事責任者が毎日のラジオ放送を通じて現状を説明し、住民からのどのような質問にも見事に答えていく番組を聴き、その技術者魂に感銘を受けたことがある。洪水時のダム管理操作は、下流住民の命に関わる作業であり、その重要性は計り知れない。特に淀川の安全に係る瀬田川洗堰と天ケ瀬ダムの管理操作は下流700万人に及ぶ人々の命と財産を守る作業でもある。それらがどのように操作されているか、その結果どのように影響が出てくるのか、避難要請はどのような状況で出されるかなど、本来住民が知り、理解の上で避難行動をとるべきである。
今後国交省が推進される「流域治水」では、全ての住民に関係する避難行動が協力的に進められるためにも、管理状況をWebTV等で公開し、河川水の動きを理解した上で、住民が避難できるよう求められていくであろう。操作規則に従って密室で、歯車の一つになって管理操作すれば問題発生時の責任は問われないだろうが、管理技術者に必要な異常時の合理的な判断力は育たない。これからの流域治水では、問題を住民と共有して、住民と共に川を知り、学びながら安全や環境を守っていくことになる。洪水時の水管理操作の公開は、技術者の真剣な姿に接し、住民が自身の命を守る緊迫した状況の中で、川について、また人の生き方について多くを学ぶ機会となろう。(おわり)
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