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2021-03-31 00:00
(連載2)日本を裏切ったミャンマー国軍司令官
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
民主化支援の一環としてミャンマー軍を支援していたことに、何ら恥ずべき点はない。むしろ誇るべきである。だが、だからこそクーデターに失望し、市民に銃を向けたミン・アウン・フライン司令官に怒りを表明する瞬間が、絶対に必要だ。日本がミャンマーを見捨てるのではない。ミン・アウン・フライン司令官が、日本を裏切ったのである。裏切りに対する怒りの表明は、日本が引き続きミャンマーの人々ともに歩むことの表明と、不可分一体だ。日本が安全保障政策で協調する重要な同盟国及びその主要なパートナー国は、ミャンマー軍幹部の非難で団結している。長期的かつ大局的な視野で見て、日本が曖昧な立場をとり続けなければならない合理的な理由はない。
「ミャンマー軍を非難するとミャンマーが中国寄りになる、日本はミャンマー軍にパイプがある」といったもっともらしいことをテレビ等で吹聴し続けている「外交専門家」の方々がいらっしゃる。だが私のような三流国際政治学者には、そのような見解は、全く近視眼的かつ無責任なものにしか感じられない。
ミン・アウン・フラインを非難しないでおけば、ミャンマーが中国を捨てて日本に走り寄ってくるなどとは到底想像できない。中国も事態の推移を見て喜んでいるわけではなく、手放しでミャンマー軍を支援できるわけでもない。もっと苦しいのはクアッドのパートナーのインドだ。非難すべきは、ミン・アウン・フラインで、中国やインドではない。日本は自らの立ち位置をはっきりさせたうえで、むしろミン・アウン・フライン司令官を追い詰める国際外交交渉の可能性こそ研究するべきだ。
国際刑事裁判所(ICC)はすでにロヒンギャ問題でミャンマー軍幹部の「人道に対する罪」の捜査をしている。今回の市民に対する暴虐も、SNS等で画像・動画証拠が山のようにあふれているし、インドに逃れて「上官命令」を証言している元警官もいる。日本はICCの最大資金拠出国である。事態を甘く見すぎず、大局的かつ長期的な視点もふまえて、確かな方向性を定めたうえで、外交努力を払うべきだ。(おわり)
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