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2021-04-01 00:00
(連載2)東京五輪に向けて日本は何をすべきか:今こそ問われる日本の「見識外交」
渡邊 啓貴
JFIR上席研究員/帝京大学教授
勿論原則論として、この考え方に反対する人は少ないであろう。しかし当然反論もあるだろう。わたしの原則論を妨げる要因も多い。日本には世界のリードをしていくだけの力はない、という悲観的見方だ。
しかし私たちにとって真の問いは、私たちの意思である。「する外交」である。周囲の国際環境によって導き出された「なる外交」ではない。これは本年一月に発効した核兵器禁止条約をめぐる議論についても同様である。五輪の開会式の選手団の筆頭はギリシャの選手団でなければならない。国際的な核兵器廃絶運動における唯一の被爆国の日本の存在はそれ以上ではないのか。
それでは五輪について今日本は何をすべきか。ここまで来た以上何が何でも実施すべきであるという考え方にも一理ある。無難に実施できれば、日本はさすがに衛生管理や秩序の維持に秀でた先進国であるという評価は得られるかもしれない。しかしそれよりも自分のためでなく、ここまで頑張ったが、世界の事情を考えて断腸の思いで「改めて」開催の有無をIOCに全面的にゆだねる。世界の平和を待つという姿勢を明示的に示すことはできないであろうか。その方が、日本としては国際的評価を高め、世界をリードする国としてのメッセージを伝えることになるのではないか。個人的には遅かりしという印象は拭えないと思うが、それでも最後にはそれなりの見識を示したことになる。
今回の五輪開催が実現せずとも、それだけの国には「次の機会」は必ずある。わたしはそれを「見識外交」と呼んでいるが、文化外交とは基本的に価値観のメッセージの伝達にその真意はあると思っている。外圧による中止となるとしたら、それは最悪のシナリオだ。IOCが海外からの観客を受け入れない旨を発表した今こそ最後の機会だ。今からでも遅くない。(おわり)
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