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2021-04-14 00:00
(連載1)プーチン体制は崩壊するか――「ロシア社会の3階層」の視点から
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
米国では、社会の2極化とその政治的影響が問題になっている。実は現代ロシアでも、社会の分極化と政治問題(特にプーチン体制への姿勢)は深刻な問題になっている。本稿ではその問題を考察したい。
ロシア社会の分裂は、大きく年齢別に分けて2層、それに、分類カテゴリーは異質だが、プーチン体制の受益層、すなわち腐敗、汚職が蔓延した「クレプトクラシー(収奪政治)」の収奪層を別に加えると、3つの層に分断されている。(収奪層には被収奪層が対置されるべきだが、年齢層と関係なく国民の多くが関与するので、本稿では言及しない。)まず年齢層から見た社会の2層分解とプーチン政治との関係を考える。すなわち、40歳台以上の中高年層と、それ以下の国民に分け、前者を中高年層、後者を青少年と三十歳台から成る若年層とする。それにクレプトクラシー受益層とプーチン体制の関係を考える。
1、中高年層――混乱より安定
第1の社会層は、ソ連邦の末期や1991年の崩壊後の「屈辱の90年代」と言われる政治社会の無政府状態と混乱、経済の破局の時代を経験した世代。つまり、生き延びるために文字通り死に物狂いで奮闘した体験をしっかり覚えている世代である。彼らは、ソ連末期や90年代に成人した現代の中高年層、即ち現代の40歳台以上あるいは40歳台半ば以上の中・高年層と言える。彼らの心理の最大の特徴は、政治・経済・社会的な「混乱」は極力避けようとする、つまり政治、社会の「安定」を何よりも強く求める層と言える。この世代は、2000年代の初め、少なくとも2008年のリーマンショックで世界の経済が後退する以前の、プーチン統治初期もしっかり覚えている。当時は油価(ガス価)の上昇で、資源輸出国のロシアでは国民生活が急速に改善した。辛苦をなめたこの世代は、ロシアは再び大国に復活したとの自信を取り戻した。その大国復活は、彼らの意識ではプーチン大統領と結びついている。
それ故、この世代の多くは近年のロシア経済の不調や年金受給年齢引き上げなどで、今ではプーチンの長期政権にウンザリし、最近の経済悪化にも反発している。それでも彼らにとってプーチンは「安定」のシンボルである。また、政権にコントロールされているテレビを唯一の情報源としているのもこの世代だ。ロシアのテレビでは、最近殺人未遂に遭ったナワリヌイなどプーチン政権批判の民主派、改革派は「外国の手先」とされており、下からの「カラー革命」は外国の策動の結果だとのプーチンの考えをしきりに宣伝している。プーチンの長期政権には一方ではウンザリしながら、他方では民主化や改革による「混乱」よりもプーチンが象徴する「安定」の方がましだと思っているのが、この世代である。(つづく)
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