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2021-04-26 00:00
米英関係にまで影響するヘンリーとミーガンをめぐる議論
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
イギリスとアメリカは、互いに大西洋を挟んで固く結びついている友好国というイメージがある。しかし、アメリカには君主制も貴族制度もない一方、イギリスには血統による王室があり、貴族たちがいる、また厳然とした身分制度社会である。この点は英米の大きな違いである。さて、オプラ・ウィンフリーは女優、トークショーの司会者として大変な人気を博した。1986年から2011年まで続いた「オプラ・ウィンフリー・ショウ」の人気は高かった。彼女の番組に出るのはステータスであり、有名人の人気のバロメーターになった。番組内でオプラが紹介した書籍は軒並みベストセラーになった。シカゴの街を観光した際、ガイドが「このビルでオプラが番組を撮影しているんですよ」と自慢げに語っていたことを思い出す。
3月にオプラが特別番組としてヘンリーとミーガン・マークルにインタビューした様子が放映された。その中でミーガンはイギリス王室の閉鎖性と人種差別を訴えた。また、彼女は精神健康上の問題を抱えたが、そのことでイギリス王室の(かなり高い地位にある)ある人物が冷淡に対応したとも主張している。自殺を考えたことも明らかにした。このインタビューを見たアメリカ国民は「やっぱり血筋だけが正統性を保証する君主制は良くないな、おとぎ話とかファンタジーの世界なら良いけど」ということになるだろうし、イギリス国民の多くは「成り上がりのアメリカ女が何を言うか、伝統も教養もない野卑な国の人間は嫌だな」ということになるだろう。この英米の根本的な違いを浮き上がらせることになった。
君主制が「残っている(残っているという表現自体が既になんらかの価値判断を含んでしまう)」国の数は多い。日本も例外ではない。貴族制度はアメリカによって叩き潰されたが、君主制度自体は残った。日本は立憲君主制である。日本国憲法にも書いてある通り、天皇は国民統合の象徴として存続することになった。それが時代遅れかどうか、考えは人それぞれである。近代的な個人主義とか自由主義とかになじまないという人もいるだろうし、伝統を大切にすべきだという人もいるだろう。今のところ、日本では天皇と皇室に関する制度について変更しようという国民の声は少ない。
今回、ヘンリーとミーガンのインタビューで、英米では君主制の是非についてまで議論がなされることだろう。そして、英米国民間に多少の感情的な齟齬が出てくるだろう。ホワイトハウスのサキ報道官が語るところによると、バイデン大統領は「ミーガン妃が表に出てきて、自分の精神に関する健康について苦しんでいることを語り、個人的な物語を話すことは勇気が必要だっただろう」と考えているとのことだが、それと同時に英米間の関係については不変だと強調している。裏を返せば、そのように言わねばならないのは、米英関係が多少ぎくしゃくしうることを懸念しているからだろう。
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