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2021-05-11 00:00
何が中国の覇権行為を助長しているのか
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
中国は、その共産党一党独裁体制の強権的支配により昨年来の新型コロナウイルス蔓延の危機からいち早く脱出し、従前の経済成長路線に戻りつつある。これに対して、日本を含む欧米先進諸国は今なお新型コロナウイルス蔓延の危機から脱出していない。このような状況がさらに長期化すれば、中国と日本を含む欧米先進諸国との経済成長のスピードの差がますます拡大することが懸念される。近い将来中国のGDP(国内総生産)が米国を追い抜くと言われているが、これがさらに加速するだろう。
中国の近年における目覚しい経済的発展は、中国政府による「製造業2025」に代表される、半導体・情報・通信・人工知能・軍事・航空・宇宙・電力など先端科学技術産業への国有企業を中心とする国家的な人的物的重点配分政策や、「一帯一路」による途上国への投資や貿易拡大、欧米・日本など先進諸国との貿易拡大によるものと考えられる。しかし、このような中国独自の政策による経済的発展以外に、米国の外交戦略の失敗など、米国の弱体化による影響を無視できない。
米国の外交戦略の最大の失敗は、トランプ政権が、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)とほぼ同様の地域をカバーするTTP(環太平洋経済連携協定)から2017年1月に離脱し、米国を中心とする巨大自由貿易圏を構築するチャンスを自ら放棄したことである。これは中国にとって僥倖であった。中国は2020年11月にRCEPに署名し、世界最大の自由貿易圏の中心に躍り出た。RCEPの発足により今後中国を中心とする相互依存のネットワークが強化され、新しい地政学的な現実が生まれるであろう。
バイデン政権が世界のリーダーシップを取り戻せず米国がさらに弱体化すれば、中国が世界の覇権を握る可能性がある。例えば、豪州政府は2020年4月に新型コロナウイルスの発生源につき国際的調査を行うことを提唱したが、これに激怒した中国政府は豪州に対して次々と強硬な貿易障壁を設置しその撤回を要求した。このような強硬な対外姿勢の強まりは中国の覇権主義の表れである。これも、米国の外交的な消極性、経済的な退潮や軍事的な弱体化が、中国の冒険主義を刺激してきたからである。台湾や尖閣諸島から米国の影響力が排除される未来もいまや一概に否定できる話ではない。中国は国際情勢を読みながら、場合によっては日本に対しても、豪州と同様の不当な制裁や、大規模な不買運動を行い、揺さぶりをかけてくるだろう。したがって、日本政府は米国との同盟関係を一層強化し、米国との「自由で開かれたインド太平洋構想」の推進及び米国のTTPへの早期復帰を働きかけ、米国の東アジアでのプレゼンスの低下を止めなければならない。それが日本の国益だからである。
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