5.財政 アメリカでは、歳入が3兆5000億ドル、歳出が4兆4000億ドル、公的債務残高の対GDP比が106%。日本は、歳入60兆円、歳出105兆円、公的債務残高の対GDP比が238%。1ドル=100円と非常にざっくり考えると、歳入の比較でアメリカは日本の6倍弱もあり、公的債務残高つまり政府の累積赤字の比率も日本の半分以下で、アメリカは日本より財政的余裕があると言えます。
6.企業 経済を回すのは、何と言っても民間企業です。合計で収益33兆ドル・利益3兆ドルを産み出し7000万人を雇用していた収益世界上位500社のうち、アメリカに本社を置く企業は121社。他方、日本企業は52社でした。この指標では、上位の日本企業数が少なくなく、海外各国現地でも雇用を産み出しており、日本企業もまだまだ健闘していると言えます。
7.株式市場 アメリカには、時価総額28兆ドル強のニューヨーク証券取引所(NYSE)、13兆ドル弱のナスダック証券取引所(NASDAQ;新興企業向け)があり、時価総額で世界1位と2位で世界シェアの45%超となっています。日本の日本証券取引所は、時価総額5兆ドル強で世界3位です。なお、10位以内にそれぞれ3兆5000億ドルから5兆ドル弱の上海、香港、深圳の3証券取引所があります。例えば私自身、前回のアメリカ滞在時にはブルームバーグニュースを毎日見ていましたが、アジア関連では概ね中国関係者が発信する中国関係情報が多く、日本関係の情報発信の積極化の重要性を幾度と無く感じました。
8.通貨 (異種同士の取引なので合計が200%になる)一日当たり取引額のシェアは、ドルが88%強(世界1位)、日本円が17%弱(世界3位)。事実上のドル本位制の下、企業や各国政府が取引通貨として自主的にドルを選んでいる結果です。また、この現体制の過去50年近くの間に、日本経済が世界2位であった42年間が概ね重なり、日本円も安全資産の代表格となっています。
9.貿易 モノとサービスの輸出総額は、アメリカ2兆5000億ドル強(世界2位)、日本9000億ドル強(世界4位)。ただ、アメリカのこの額の対GDP比は10%台前半であり、他国との比較では内需型であると言って良いでしょう。日本も20%未満です。ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、オランダ、韓国などはこの数字が高く、外需型であると改めて思います。同じく輸入総額は、アメリカ2兆6000億ドル弱(世界1位)、日本7000億ドル強(世界4位)です。
10.原油 輸入日量は、アメリカ800万バレル弱、日本300万バレル強。アメリカは600万バレル弱の輸出もしています。使用される資源エネルギーの多様化が進み、2020年春には原油先物価格がゼロ未満になったほど原油価格暴落の印象が強い昨今ですが、まだ今は原油に完全に取って替わるものは無く、依然として重要な指標です。
11.食料自給率 地球の気候変動が科学的に言われ、定性的実感としては確かにある昨今、食料や農業については誰しも気になる或いは気にすべきです。例えば、時々議論のあるカロリーベースで、2000年代後半、アメリカは124%、日本は40%となっています。ちなみに、食料品の物価については、モノにも場所や店にも依りますが、アメリカでは概ねさほど安くないという個人的印象を持っています。
12.軍事 アメリカの軍事費は7300億ドル強で、これもダントツ世界一。対GDP比は3.4%です。日本は世界9位の480億ドル弱で、対GDP比は依然として1%未満を堅持しています。行使しないことが多い反面、軍事力は国防上そして国際的影響力上も重要であり、外交力や経済力とも相関している、というのが古くからの考え方です。日本の場合は、議論・調査・立案や対外調整を重ねつつ一定のスピード感を以って整え続けるしかありません。
最後に 以上、アメリカという国全体はあくまで概ねこんな感じというのを、各種指標を基に日本との対照もしながら挙げてみました。お国柄が各国にあるので、日本がアメリカのようにならなければならないと考えたことは、当然ながら一度もありません。他方、日米関係が日本の基軸であることは毎日の現実であるため、アメリカを正確に把握しておくことは本来、必須です。他の外国についても濃淡等はあれども知っておくことは同様に重要です。相手を理解せずに友好関係が続くはずがありません。そして、他国の良い点は可能な範囲で取り入れるよう試してみても良い、とも思います。北米・欧州・豪州・NZについて企業・地方・大学などを個別に英語で調べることを通じて、微力ながら今後も日本の成長・成熟に貢献したいと考えています。(おわり)