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2021-06-01 00:00
(連載1)アジア人差別と日本人の国際問題意識
河村 洋
外交評論家
一昨年12月に中国の武漢で発生したコロナ禍を機に欧米でのアジア人差別が激化した事態を受け、アメリカではバイデン政権が去る5月20日にコロナ反憎悪法案に署名した。だが我々はそれがパンデミックに対する不安よりも根深いものであることを忘れてはならない。その背景にはブレグジットやトランプ現象に見られるような、反グローバル化や国内の政治的分断がある。何と言っても、黒人、イスラム教徒、ユダヤ人、メキシコ人、その他難民などへの差別や暴力が激化している状況下で、日本人や他の東アジア諸国民には被害が及ばないということは考え難い。
これまでにe-論壇にてロシアによる欧米極右への支援について再三にわたり述べてきた私の視点からすれば、やっと日本の言論界や一般国民がコロナ禍を契機に白人キリスト教ナショナリズムの脅威に目覚めたことは遅きに失したと思われる。欧州大西洋圏での極右ポピュリズムは東欧からイタリアを席巻し、やがては西側同盟の本丸である英米に及んだ。
非常に奇妙なことに、こうした極右政治家の頭目とも言うべきプーチン、トランプ、ファラージ諸氏は実際にはレイシストではないと擁護する声もある。確かに彼らにも非白人、非キリスト教徒の友人もいるかも知れない。しかしある人物が内心ではどこまでレイシストなのかという内面の問題は、心理学者でもないとわかりにくい。むしろ政治観測および分析の観点からは、彼らに代表される極右政治家達が大衆の間に残るレイシズム感情を自分達の政治目的のために利用していることの悪質性に着目すべきである。
極右政治家が社会的分断と不安を煽って自分達の政治的目的を最大限に達成しようとしているとこは、周知の通りである。レイシズムは大衆扇動に「好都合な道具」に過ぎない。その典型例がロシアのウラジーミル・プーチン大統領で、ロシア正教会との伝統的な関係による国家統治とイスラム過激派に対する強硬姿勢は、欧米の白人キリスト教ナショナリストと文化的な親和性が非常に高い。そしてトランプ氏が落選してもなお、本年4月にセルゲイ・ラブロフ外相はアメリカでの白人に対する逆差別に懸念を表明して揺さぶりをかけている。だが欧米における極右ポピュリズムは国内政治から台頭してきたもので、プーチン氏が作り上げたものではない。何と言ってもプーチン氏が欧米のホワイト・トラッシュに共感を抱くとは考え難い。クレムリンの欧米極右支援は、地政学とイデオロギーの双方で西側民主主義の内部分裂と弱体化を謀る非対称戦争である。(つづく)
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