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2021-06-14 00:00
G7首脳宣言「台湾海峡」初めて明記
鍋嶋 敬三
評論家
英国が主催国になった先進7ヶ国(G7)首脳会議(6月11-13日)は中国などの権威主義国家に対する民主主義国家の体制間競争で3年ぶりの結束を示すことができた。共同宣言では緊張が高まる「台湾海峡の平和と安定の重要性」について、サミットとして初めて明記した。東・南シナ海情勢を深刻に懸念、現状を変更し緊張を高める一方的な試みに強い反対も盛り込んだ。中国の「一帯一路」に対抗するインフラ(社会基盤)投資をはじめ、供給網(サプライチェーン)の強靱化、人権侵害、海洋の安全保障など経済、社会、安全保障に至る広範な領域で「民主主義制度の価値の共有がG7を結束させた」(米政府高官)ことは高く評価される。世界は今、ポスト冷戦期の流動化が著しい国際秩序の転換期にある。新たな秩序の形成に当たって自由民主主義体制vs.権威主義・全体主義体制との熾烈な競争に世界が直面している。
英国政府はG7サミットを控えた3月に「競争時代のグローバル・ブリテン」と題する安全保障、外交の「統合レビュー」を発表した。ジョンソン首相は「将来の国際秩序の形成」について、冷戦後の国際システムの「現状を守る」ことから、サイバー空間や宇宙にまで未来のフロンティアを拡大し、民主主義的な価値を守ることへダイナミックに進む方針を提唱している。西側世界の危機感は米国の相対的な指導力の低下、トランプ政権下での米欧間の亀裂、中国と経済関係が強いドイツなど有力国家、「一帯一路」戦略に乗ったイタリアなど西欧も分裂、中東欧の強権国家が中国へなびくことで強まった。中国とロシアは対米共同戦線を張る。米中対立は2021年1月、バイデン民主党政権の発足で新局面を迎えたが緊張は強まり、同盟重視と多国間協調主義を打ち出したバイデン政権は短期間に積極的な外交を展開してきた。
人権重視の価値観外交を推し進めて対中関係は政治的に緊張、海洋の自由などをめぐって安全保障では強硬姿勢を示す。一方で気候変動など地球規模の問題では対中協力姿勢も否定はしない。地域的には同盟関係を軸にした日米豪印の4ヶ国(QUAD)の枠組を軸に「自由で開かれたインド太平洋」戦略を推進する。QUAD の中核となる日米安保同盟では4月の日米首脳会談共同声明で52年ぶりに「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記、G7 にも反映された。英国、フランス、ドイツはこの地域に軍艦を派遣、日米と協力する行動を取り始めた。英国は統合レビューの中で「ミドルパワー」は「協働すれば2020年代に影響力を増大させる。インド太平洋はますます地政学的、経済的に重要性を増す」と指摘した。既にドイツ、オランダは2020年にはインド太平洋への政策指針を発表、英国に続いて欧州連合(EU)も2021年4月外相会議で「インド太平洋における協力戦略」を採択した。EUにとってインド太平洋地域に「重要な利害関係があり、戦略的な関心、プレゼンスそして行動を強化することを決定」したのであった。
G7サミットの共同宣言も欧州の認識の変化を反映している。安倍晋三政権を継承した菅義偉首相は外交を順当にこなしてきた。米国やG7、豪州などの民主主義国だけでなく、EU とのテレビ首脳会議(5月27日)で「自由で開かれたインド太平洋」構想への支持を固めた。安倍政権下で実現させた日EUの経済連携協定(EPA)や戦略パートナーシップ協定(SPA)が基盤になっている。菅氏は自由と民主主義という価値観を外交の正面に出すことで米欧との基本的な関係を構築することができた。今後はこれを「パワー」として、民主主義制度や人権を真っ正面から否定する独裁的な強権国家の中国やロシア、北朝鮮といかに「組み合う」かである。彼らは国際法や日本の主権(領土・領海・領空、国民の安全と財産の保全)を公然と無視し続ける。日本の主権を毅然と公に主張し無法を正す行動を起こしてこそ国際的な支持を得られる。その土台が日米、G7、日EUでありQUADである。
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