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2007-09-17 00:00
日印友好ムードの向上とその活用法
岡本幸治
大阪国際大学名誉教授
9月初めから10日余りインドに滞在した。元気印一杯のインドについていろいろ報告しておきたいことはあるが、とりあえず安倍首相の訪印関連に限って報告と提案を少々したい。安倍首相の訪印そしてインド国会における演説の反応は、非常に良かったということだ。「2つの海の交わり」と題した政策演説(太平洋とインド洋を代表する日印交流の深化を意味している)に対しては、立ち見者も出た両院国会議員から30回を超える拍手が送られ、最後は全員起立して一段と大きな拍手が起きた。与野党の指導者がその内容に高い評価を与えている。私もその全文に目を通したが、なかなか良くできていると思った。日本のメディアは、そういうインド側の好意的評価についてはまったく伝えていない。200人の財界人や一流大学の学長たちが同行したこともあり、インドにおいては、いよいよ日印関係が深まるという期待が高まっている。
ところが安倍首相の突然の辞任には「インド人もビックリ」。私は移動中だったのでインドのメディア報道を詳しく見る暇がなかったが、代表的日刊紙の1つ『タイムズ・オブ・インディア』では、1年にわたるスキャンダルの連続によってそうなったのだろうという、底の浅い解説記事が出ていた。私に質問する者もいたが、どうして新内閣を発足させて間もない時点で突如辞任に至ったのか、「日本人もビックリ」の状態で、まともな返答・解説ができかねたのは残念である。せっかく盛り上がりつつある日印友好ムードが、安倍首相の辞任により冷え込むことのないように期待したい。近隣アジアだけがアジアではないということ、90年代に江沢民がしきりに日本人に重視せよと説いて見せた「歴史の鑑」から外交の智慧を借用するならば、次の首相も「遠交近攻」を大いに学ぶべし、と提案しておきたい。
私はかねてからインドの遅れた物流・人流インフラの改善には、環境問題を考えても鉄道が最善だと言ってきた。デリー・ムンバイ間に高速貨物鉄道を敷設し、沿線の工業地帯造成に寄与するという日本の提案に対しては、インド側で特に高い期待が見られた。日本は当初新幹線を提案したようだが、物流インフラの整備を優先させたいインド政府の要望で貨物鉄道に変更されたようだ。これで新幹線案は消滅したように見えるが、一気に長大な路線を敷く代わりに、例えばデリーから車でぶっ飛ばしても4時間以上かかるジャイプール(アグラと並ぶ最大の観光地)などにまず新幹線を試験的に敷設すれば、そのデモンストレーション効果は巨大であり、他の州も是非新幹線をほしいと中央政府と日本側に陳情してくることは目に見えている。こちらから懸命に売り込まなくても、向こうが食いついてくるようになるのは確実だ。
日本の誇る高度技術について、官民が協力して、長期的視野でそういう輸出戦略を急ぎ構築することを勧めたい。インドでは日本の技術と製品の優秀さはつとに知られており、高い評価が与えられている。家電の販売戦略では90年代に韓国メーカーに完全に後れを取ったが、この「失われた10年」を日本が高度技術の分野で取り返す好機を失うことのないようにしてもらいたい。大技術だけでなく、日本の中小企業の優れた中小技術導入にもインド側は大いに期待しているが、遠くて未知の国である「天竺」進出には、日本の多くの中小企業がとまどっているのが実情である。この隘路の克服のためには、相談口の開設・民間委託など、制度的対応が必要だろう。
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