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2021-06-22 00:00
(連載1)共産主義政党と「言論の自由」
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
「言論の自由」とは、政治的には「政府当局者に対する批判の自由であり、民主主義の精髄である。」(小泉信三著「共産主義批判の常識」小泉信三全集10巻36頁参照)とされる。法律的には「憲法で保障された市民的自由であり国民の基本的人権である。」(日本国憲法21条)。「言論の自由」は多様な価値観の存在と対立を前提とし、言論を通じてより良い結論を得るための民主主義の根幹である。
「言論の自由」は、欧米や日本などの自由民主主義国家のみならず、旧ソ連や中国、北朝鮮などの社会主義・共産主義国家においても憲法上保障されている。即ち、1936年のソ連の所謂「スターリン憲法」においても、言論・出版・集会・デモなどの自由が認められていた。ただし、これらの自由は「社会主義体制を強化するため」にのみ認められていた。中華人民共和国憲法35条でも言論・出版・結社の自由が認められている。朝鮮民主主義人民共和国憲法67条でも言論・出版・集会・結社の自由が認められている。
上記の通り、社会主義・共産主義国家においても憲法上「言論の自由」が認められている。しかし、「スターリン憲法」では、「社会主義体制を強化するため」との条件付である。これは、中国、北朝鮮でも同じであり、社会主義政権を批判する「言論の自由」はあり得ない。それどころか、旧ソ連では社会主義政権に対する批判は、「政府を転覆させようとするすべての行為」に該当し、刑法上の「反革命罪」として死刑を含む重罪に処せられた。中国でも社会主義政権に対する批判は、刑法上の「反革命罪」、現在では「国家安全危害罪」に該当し、死刑を含む重罪に処せられる。北朝鮮でも社会主義政権に対する批判は、「反党反革命分子」として、刑法上の国家転覆陰謀罪、祖国反逆罪、民族反逆罪、反国家宣伝・扇動罪に該当し、死刑を含む重罪に処せられる。中国については、香港、新疆ウイグル、チベットに対する「言論弾圧」は深刻である。
このように、旧ソ連、中国、北朝鮮などの社会主義・共産主義国家が、「政府当局者に対する批判の自由」(前掲「共産主義批判の常識」)を認めない以上は、実質的に「言論の自由」が保障されているとは到底言えない。旧ソ連・中国・北朝鮮などの社会主義・共産主義国家が、欧米や日本などの自由民主主義国家と同様の「言論の自由」を認めない根本的理由は、哲学的には、自由民主主義が「多元的価値観」に立脚するのに対して、社会主義・共産主義は「一元的価値観」に立脚し、政治的には議会制民主主義ではなく、「プロレタリアート独裁」の政治体制だからである。中華人民共和国憲法第1条では、中国は労働者階級が指導する人民民主主義独裁の社会主義国家と規定されている。人民民主主義独裁とはプロレタリアート独裁の一形態であり、階級敵に対する独裁が行われるのである(毛沢東著「人民民主主義独裁について」世界の大思想35巻334頁以下参照)。(つづく)
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