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2021-07-07 00:00
(連載2)コロナ禍とわが国の危機管理の根本問題
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
私が強い違和感を抱くのは、コロナ問題に関して野党が「国の無策」を強く批判していることだ。国家=悪、権力=悪と見て、国の安全保障の強化とか非常事態への備えを「軍国主義」と強く批判してきたのは、現在の左派系あるいはリベラル系野党である。たしかに国家は基本的人権と対立する場合もある。しかし国家の安全だけでなく、市民社会における個人の自由や基本的人権も、国家によって守られているというのも厳然たる事実だ。戦後わが国は冷戦構造に依拠してきた所為か、或いは日本社会では伝統的に秩序感覚が強い所為か、国難と言えるような大きな危機を防ぐためであっても、今日のわれわれ日本人の多くは、一時的にせよ国家が基本的人権を制限することを、わが国の戦時中の事態と重ねて強く反発する。このような発想や心理からそろそろ抜け出るべき時ではないか。
最後に、素人だが、日本の医療問題について一言述べたい。何年も前から私が疑問に思っていたことがある。それは、何故わが国では病院患者の平均入院日数が他国と比べて飛びぬけて多いのか、という問題だ(これはインターネットですぐ分かる)。日本の平均入院日数が、27.8日に対し、デンマーク5.4日、スウェーデン5.8日、米国6.1日、英国6.8日、カナダ7.5日、フランス8.8日、ドイツ8.9日である(2018年または2017年)。
最近、医療崩壊の危機が度々報道される。同時に、人口当たりの医師数、看護師数は、国際比較でも少なくないとか、人口当たりのベッド数は世界で飛びぬけて多いとも報じられる。この矛盾については、わが国では公的な大規模病院が少なく、民営とか零細な個人経営の病院が圧倒的に多いため、病棟ごとの、あるいは階ごとのゾーン別け(ゾーニング)が困難ということも指摘される。しかし、コロナ問題に関連して、平均入院日数の問題を指摘している医療関係者や専門家の見解は、寡聞にして知らなかったが、最近森山美知子広島大学教授(カリフォルニア州立大学看護学部修士課程修了、医学博士。日本赤十字社、厚労省勤務を経験)がある記事で私の疑問に答えてくれた(「看護師への権限移譲と非常時の人員配置がカギ」『中央公論』2021年7月号 前述の入院日数もこの記事より)。
彼女は人口減少とか、医療技術進歩で日帰り手術が増えたことと、ベッド数の多さの間にミスマッチがあると言う。それに対し、病床を埋めるベッドコントロールをしているので、必然的に入院期間が長くなる、と指摘している。当然、病床数あるいは入院患者数当たりの医師、看護師数は各国より大幅に少なくなる(特に看護師は、低給与でありながら負担のみ大きくなる)。私も、救急車が急病人を運び込もうとしても、受け入れる病院を探すのに苦労するとの話はよく聞く。コロナ関連の医療崩壊の危機も、これらの問題と無関係ではないだろう。日本医師会関係者がこの問題をあまり表に出さないのも、彼らの利害に深く関連しているからと推察する。個人的経験から見ても、大都市の拠点病院や有名な大学病院は、患者が押し掛けるので必然的に入院日数は他国並みに短い。一方民営とか個人病院は空きベッドを減らすため入院日数を長くする。当然、国民が負担する医療保険料も高くなり、コロナ患者を受け入れた病院の医師や看護師は、加重な負担を強いられる。政府もわれわれ国民も、コロナ禍を希貨として、ワクチン問題とか医療体制問題だけでなく、国の安全保障、危機管理のあり方全般を考え直す機会とすべきではなかろうか。(おわり)
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