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2021-07-12 00:00
コロナワクチンは基礎研究の重要性をあらためて我々に示した
船田 元
衆議院議員
ようやく日本でもコロナワクチンの接種が軌道に乗りつつある。ワクチン接種がコロナ終息の切り札であることは、世界各国で証明されつつあるが、そこで使われているファイザー製とモデルナ製のワクチンは、mRNA(メッセンジャー RNA)を応用したものだ。この研究開発にはハンガリー出身の科学者カタリン・カリコ女史が深く関わったとされる。多分この秋のノーベル賞を取るだろう。しかし彼女の研究はかつては脚光を浴びることは少なかった。光が当たったのは、京都大学の山中伸弥教授が作ったiPS細胞を効率的に生産するのに、このmRNAの手法が役立つことが分かったからだ。まさに基礎研究同士が結合(イノベート)して、極めて有用な応用技術を生み出した典型であり、基礎研究の重要性をあらためて我々に示したものといえよう。今後発展が見込まれるであろう人工知能や量子コンピュータ・暗号、カーボンニュートラル関連技術など最先端の科学技術も、基礎研究という底辺がしっかりしていないと成り立たないと言われている。
ところが我が国の基礎研究の水準は昨今地盤沈下を起こしている。日本人研究者の書いた論文が第三者に引用された数は、15年前の世界第4位から3年前の9位に転落し、現在では10位以下になっているだろう。基礎研究の担い手は若手や女性研究者、大学院博士課程やポスドクの人たちが中心だが、彼らに与えられる研究費や安定した研究環境が削減されてきたことが影響している。
そこで我々はベテラン研究者を手厚く処遇するような、硬直的人事を行なってきた大学にメスを入れて、若手にポストを与えることを奨励するとともに、科学研究費補助金の優先配分、創発的研究支援などの対策を講じてきた。さらに昨年度からは大学の基礎研究に回す資金を安定的に確保するため、財投資金や民間ファンドを活用した10兆円の「大学ファンド」の創設に着手した。これまでに4兆5千億円を積んだが、令和4年度当初予算に残りを積み増し、早期に10兆円ファンドにする予定である。このファンドを資金運用することで、その収益を大学での研究につぎ込んで底上げを目指している。仮に年間収益率1%とすると1000億円、GPIF(年金積立金運用独立行政法人)並の年率3%強とすると3000億円以上の資金が活用されることとなる。
もちろん資金を受ける大学側の旧態依然とした硬直的人事や予算配分をそのままにしていては、基礎研究に回るお金が減ってしまう。大学改革をきちんと実行しているところにしか配分しては行けない。最近言われ始めた「経済安全保障」にもつながる、研究成果の自国保有とスタンダードの獲得のために「大学ファンド」を活用していきたい。
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