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2021-07-29 00:00
バイデン政権の対中抑止外交
松川 るい
参議院議員
バイデン政権発足以降の国際政治の流れは速い。3月に日米「2+2」,日韓2+2、アラスカでの米中外相会談、4月の日米首脳会談、5月に米韓首脳会談、6月にG7、米ロ首脳会談。全て、バイデン政権が対中戦略を明確に意識して行ったものである(無論、中国もそれに対応した外交を展開している)。
3月の日米「2+2」にて実質的に初めて日米間において「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」した。さらに、日米首脳会談、米韓首脳会談(注)、さらにG7においても「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。」ことが明記された。G7という欧州中心の枠組みにおいても台湾海峡が関心事項として取り上げられたことは、中国に対する大きな「政治的な」抑止力となると評価できる。要するに台湾海峡で何か事を起こせば、欧州主要国との関係も悪くなるという政治的コストを考慮せざるを得ないということを意味するからだ。また、これらすべての会合において、半導体をはじめとする機微技術について安全なサプライチェーンの構築といった経済安保の取り組みも力点となっている。同盟国との連携で中国に対処するという方針を公にしていたバイデン政権の面目躍如だといえる。トランプ政権ではこうはいかなかっただろう。この過程で日本の果たした役割は大きい。多くの欧州主要国が艦船をインド太平洋に派遣し、日米豪他と共同訓練を実施していることの発する対中抑止メッセージは明確なものだ。(注)米韓首脳会談においては「台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を強調した」との記述。
さて、そのように国際社会が中国に対して、台湾海峡にて事を起こさせないことをはじめ、南シナ海、東シナ海における一方的行動を止めるよう呼びかけ、香港、新疆ウィグル自治区における人権状況への深刻な懸念を表明するなどの抑止政策を展開することとなったのは、ひとえに、中国のこれまでの行動があまりにも強権的に過ぎ、力を背景に現状を一方的に変更する行動が許容できないレベルとなってきたことによる。無論、その背景には、米中のパワーバランスが拮抗に向かう現状を放置すれば、経済的にも軍事的にも強大化する中国の行動を変えさせることが現在以上に将来はより難しくなってしまうとのリアリスティックな評価もあろう。しかし、いずれにせよ、日米、QUAD、G7という「自由民主主義陣営」の行動は、中国の行動に対する「反応」、「対処」であることは間違いない。
中国がこれをどう受け止め対処していくつもりかが問題である。中国はこれまでのところ、一切方針変更はなく、台湾統一は共産党の歴史的任務であると宣言し、香港・ウィグルについては内政問題として大陸同化政策を進め、先端技術においてはデカップリングに備えて国産化を進め経済技術における自律性を高めるといういわば「米国からの挑戦を受けて立つ」姿勢である。もっとも、日米首脳会談や米韓首脳会談やG7などに対する中国の反応は、割合抑制されたものだったと捉えている。
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