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2021-07-31 00:00
(連載2)日本共産党は「全体主義政党」と言えるか
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
日本共産党の理論面での最高指導者である不破哲三同党付属社会科学研究所所長も「社会主義日本では労働者階級の権力すなわちプロレタリアート独裁が樹立されなければならない。」(不破哲三著「人民的議会主義」241頁参照)と明確に述べている。そして、マルクス・レーニン主義の核心は暴力革命とプロレタリアート独裁であるから(レーニン著「国家と革命」レーニン全集25巻432頁。445頁参照)、日本共産党が党規約でマルクス・レーニン主義(「科学的社会主義」)を理論的基礎とし、党綱領で共産党一党独裁であるプロレタリアート独裁を容認している以上は、反対政党の存在も、個人による政府批判も許されないから、前記ブリタニカの定義によれば、理論上、日本共産党に対し「全体主義政党」との批判は可能と言えよう。
一方、日本共産党は、「民主集中制」(「民主主義的中央集権制」)を党運営の組織原則としている(党規約3条)。しかし、元日本共産党の政策委員長で、元参議院議員の政治評論家筆坂秀世氏は、「組織内には原則として上下の関係しかなく、基本的には党員同士の横のつながりは禁止されている。党中央委員は党大会で選出されるが、あらかじめ中央委員会が推薦した候補者名簿に対する一種の信任投票に過ぎず、落選者はおらず到底選挙とは言えない。また、他の政党のように党員が党代表を直接選挙で選ぶという制度は採用されていない。党内に真の選挙は存在しない。」(筆坂秀世著「日本共産党」38頁。84頁以下参照)と述べている。
これが事実であるとすれば、「民主集中制」を組織原則とする日本共産党の実態は「上意下達」の組織であり、「党内民主主義」に疑問がある。横のつながりの禁止は党中央批判や分派活動を防止するためであろう。さらに、党代表が党員の直接選挙で選ばれないうえに、党代表の任期や党代表選出の方法・過程などに透明性が見られない。党内での党代表や党中央に対する批判の自由についても疑問がある。共産党の「民主集中制」については、「個人は組織に、下級は上級に無条件で従うということで、いわば軍隊のようなものである。司令部たる党中央が全軍(全国の党組織)を意のままに操れる。民主集中制は、その本質は独裁制である。」(立花隆著「日本共産党の研究」上巻22頁。25頁参照)との批判がある。
(1)以上の通り、日本共産党が、党規約で共産主義イデオロギーであるマルクス・レーニン主義(「科学的社会主義」)を理論的基礎とし、党綱領でプロレタリアート独裁を容認する限り、その実態は共産党一党独裁であり、反対政党の存在や個人の政府批判は認められないから、前記ブリタニカの定義によれば、理論上、日本共産党に対し「全体主義政党」との批判は可能と言えよう。(2)また、日本共産党は、党規約で「民主集中制」を組織原則とするが、その実態が「上意下達」であり、党代表や党中央に対する批判が組織的に許されないとすれば、「党内民主主義」に疑問があるから、前記ブリタニカの定義によれば、党組織及び党運営上、日本共産党に対し「全体主義政党」との批判は可能と言えよう。(3)最も重要なことは、日本共産党が将来政権を獲得した場合に、実際に共産党政権を批判する政党や個人の存在を全面的に認めるかどうかである。このことは現在の日本共産党の党組織及び党運営のあり方と直結しており、決して無関係ではないことを、共産党との選挙協力などを行なう他の野党及び国民は十分に注意しなければならない。(おわり)
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