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2021-08-03 00:00
結党100周年、中国共産党の絶頂と斜陽
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
今こそ絶頂、これから陽は長城の西方に傾いていくことだろう。何のことかといえば「中華人民共和国」の歴史上の「画期(劃期)」のことである。中国共産党結党100周年記念行事の映像を見ていての筆者の率直な感想である。まさに2021年夏の「今いま」こそが共産中国の歴史のピークにあって、ようやく分水嶺が見えてきたように筆者には思えたのである。習主席の66分にも及ぶ長広舌とその中身は、太陽の沈むのを止めた平清盛や、ユーラシア大陸を血に染めたチンギス=ハーン、フビライやヒットラー、スターリンにも似て、もはや国外よりもなお一層国内に心穏やかでない人々を大量製造しているのではないだろうか。そう思いながら映像を見たのである。
4000年とも5000年とも言う中国の歴史年表をあらためて繰ってみると、唐代の289年、明代の276年、清代の268年などというように長期の年代区分も有るにはあるが、一方で隋代の40年、元代の35年など、三国、西晋、東晋、南北朝、五代十国、宋代等々、そしてなにより近現代史で言えば中華民国にあっては37年というように、その繁栄の画期はあっという間に消長を重ねた歴史の方が圧倒的に多いのである。そういう中で、現代中国が「永久政権」である保証はまったく無い。
日本の宰相菅氏に似て、習近平氏も陰気で鬱陶しい雰囲気を漂わせる指導者で、自己保身が強く他者を近付けない、孤立を恐れない独立心の強い人のように見える。50とも60とも言われる多民族国家において人心を掌握するのは容易なことではないだろう。9000万人の中国共産党員の分子を全土に隈なく配置して監視している強権政治を敷くとはいえ、高度経済成長に乗り遅れ機会に恵まれない少数民族の人々や、才能や学歴によって貧困に陥った漢民族の大衆の不満、徹底した管理とはいえ情報化の進展は自由を求める精神的文化的開放/解放を要求し、他方で高齢化の進行は財政の逼迫と成長の鈍化を招き、現代日本病と同じ中国病に罹患するのも時間の問題だろう。
「奢れる『習』は久しからず」、「一将功成りて万骨枯る」、居並ぶ高位高官に黒い式服を着せ、自らは天安門に懸かる毛沢東の肖像画と瓜二つの灰青色の上下に身を包んだ習近平氏の姿に、筆者は中国の歴史に無数に現れ消えていった「奢れる」権力者たちの姿を重ねて見ていたのである。今こそ絶頂にあり。以後、陽は万里の長城の西方に傾いていくことだろう。しからば、後世において「あの時が中国のピークだったね」と言われる穏やかな着地点が用意されることを、我、人と共に一層つよく期待する今日この頃である。
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