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2021-08-18 00:00
(連載2)中国の「核恫喝」に対する日本の三つの選択肢
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
(1)第一の選択肢は、日本独自の核武装である。日本政府の確定した見解によれば、自衛のための必要最小限度の核武装は合憲である。しかし、日本人特有の強固な「核アレルギー」があるため、世論の反対が強いであろう。そのうえ、核武装のためには「核不拡散条約」からの脱退が必要であり、核不拡散を重視する米国の同意を取り付けることも容易ではない。よって、日本独自の核武装は困難であろう。ただし、中国による「核恫喝」が日本の存立自体を危うくする事態となれば、同条約からの脱退が可能(10条1項)であるから、日本国民は最悪の事態を考えて、常に核武装の覚悟をしておく必要がある。日本の世界最高水準の高度な原子力技術は重要である。
(2)第二の選択肢は、米国との「核共有」(ニュークリア・シェアリング)である。これは日本国内において戦術核兵器を米国と共同して管理し、日本が他国から核攻撃を受けた場合は米国と共同して核による反撃をする体制である。現在、ドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアが米国と「核共有」を行い、核大国ロシアに対しても「核抑止力」を保有している。そのため、これらの諸国に対するロシアによる「核恫喝」はない。これは、ロシアによるこれらの諸国に対する核攻撃は、核兵器の共同管理国として「核共有」をする米国に対する核攻撃ともなり得るから、核による反撃を受ける危険性があるためと考えられる。よって、日米の「核共有」は中国に対する「核抑止力」の強化になることは明らかであろう。
(3)第三の選択肢は、現行の「非核三原則」のうちの「持ち込ませず」を改定し、米国による日本国内への「核持ち込み」を認めることである。「核持ち込み」を認めれば、中国による日本に対する核攻撃は米国に対する核攻撃ともなり得るから、中国は米国との核戦争を覚悟しなければならず、中国に対する「核抑止力」の強化に有効であろう。とりわけ、抽象的、観念的な「核の傘」とは異なり、日本国内への「核持ち込み」は具体的、現実的であり可視化された「核抑止力」として、対中核抑止の強化になる。
以上の通り、中国による「核恫喝」に対しては、日本として三つの選択肢がある。今後の中国側の「核恫喝」が日本の存立にかかわる場合は、日本は米国の「拡大核抑止」(「核の傘」)のみに全面的に依存する現行の安全保障体制の根本的見直しを躊躇すべきではない。中国による「核恫喝」に対して、米国や日本がこれに屈服し譲歩することは、「戦わずして勝つ」(「孫子の兵法」)中国共産党の思う壺であることを認識すべきである。中国の「核恫喝」に対する屈服や譲歩は、前記の中国が狙う尖閣諸島や沖縄の防衛にも波及するのである。(おわり)
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