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2021-08-27 00:00
「日米4リーダーによる緊急提言:日米の対中戦略の基本原則」を読んで
河村 洋
外交評論家
去る7月に日本国際フォーラムとカーネギー国際平和財団より特別刊行された
「日米4リーダーによる緊急提言:日米の対中戦略の基本原則」
を日英両語で読み、これまで日米双方を代表する研究者が積み上げてきた「日米がルールを基盤とした世界秩序を主導し、中国がそれに挑むならば日米およびクォッドの枠組を超えて多国間で対抗してゆく」政策提言が簡潔にまとめられていました。それとともに経済安全保障という新しい課題も注目されると思われます。
その一方で私が気になったのは、今回の報告書の内容理解を左右すると思われる総論の見出しで、日英両語に若干のずれがあるためにそれぞれ別の報告書を読んだ者の間では問題の認識が違ってくると思われます。該当の箇所は日英両語のも3ページに記された以下の部分です。
日本語版)「総論――自由⺠主主義体制の擁護者としての日米」
英語版)General Remarks: the United States and Japan as Defenders of the International Rules-Based Order
どちらも大意はほぼ同じですが、日本語版の「自由⺠主主義体制の擁護者」という文言には冷戦的な対決志向を暗示する印象があるのに対し、“Defenders of the International Rules-Based Order”には政治体制の違いを乗り越えたインクルーシブなニュアンスを感じ取れます。国家間の条約と違って今件のような場合には多少の意訳も許容されるかも知れませんが、二つの表現から中国を我々の国際政治体制にどこまで受け入れるのか否かをめぐって認識の違いが生ずると思われます。また、これまで日本国際フォーラムのイベントに参加した際には、“International Rules-Based Order”という語は意訳されずに「ルールに基づいた国際秩序」という日本語が使われていました。
私が本件を気にかけた理由は、これまで日本国際フォーラムの日米対話に参加する度に日本の専門家の方々から「ヨーロッパなど極東地域外の国々と日本とでは、中国の脅威に対する認識が違う」と聞き続けてきました。そうした事情をかかえながらも日本の識者達が長年にわたって国際社会に中国の脅威を訴え続けてきたことが、先のG7カービスベイの共同宣言にて史上初めて台湾海峡の安全保障が言及されるという成果につながったものと思われます。このことを踏まえれば、日英両語のニュアンスの違いによって同じ報告書を読んでも再び認識の不一致が生ずる可能性も懸念されます。幸いにも今回の国際プロジェクトに関わったリーダーの方々達は日米双方とも相手国の言語に通じているので、日本発の政策提言を日本語で読む人達と英語など外国語で読む人達の間に生じる認識の違いを熟知されていると思われます。
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