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2021-09-05 00:00
(連載2)’アフガン’は国内問題なのか-内政干渉の境界線
倉西 雅子
政治学者
タリバンに対する国際社会の認識は、20年前と今日とでは180度転換しているのですが、ここに、’タリバンとは、本当に純粋な国内勢力なのか’という問題が残ります。ISの活動にも見られるように、もとよりイスラム原理主義は国際ネットワークを形成しており、タリバンもその一翼を担っております。そのメンバーの多くは、アフガニスタンにあって多数派となるパシュトゥン人とされていますが、外国出身者も少なくないことでしょう。しかも、タリバンの思想的基盤はテオバンド派にあるとされています。同派は、インドがイギリス領であった19世紀に同国のウッタル・プラデーシュ州(テオバンド)に始まったスンナ派イスラム改革運動を起源としています。外来思想である共産主義を国家イデオロギーとする中国の体制と同様に、タリバンが依拠する思想にあっても外来性が認められるのです。
こうした側面からしますと、タリバンを純粋に国内勢力と見なすのは難しくなるのですが、仮に、タリバンを’国際性を帯びた国内勢力’とする視点から見ますと、この問題は、アフガニスタンのみならず、日本国を含む全世界の諸国に対して、これまで意識の表面に上ることがなかった重大な問題を浮かび上がらせることになりましょう。それは、国内組織を装った海外勢力、あるいは、国際勢力による国権の掌握という問題です。表面に現れている姿が’国内組織’である限り、それが武力であれ、民主的選挙を経たものであれ、国際法に照らして侵略とみなされることなく、国内問題として放置されてしまうことを意味するからです。
この問題は、国際社会における間接侵略、あるいは、間接支配の黙認問題とも言えるのですが、果たして、こうした問題に対する解決策は存在するのでしょうか。少なくとも今般のタリバンによるカブール奪還の場合、平和を脅かす重大な国際問題とこれを認定し、第二次アフガン戦争を闘うべきなのかと申しますと、早急には回答は出ないように思えます。民主的、かつ、平和的な手段としては、如何なる外部勢力のコントロール下に置かれていない真の国内組織を結成し、改めて国造りを行うことが最も望ましいのですが、このためには、国民に政治的自由が認められる必要がありましょう。
何れにしましても、目下、急ぐべきは、タリバンという組織の背後関係の解明なのかもしれません。そして、タリバンの背後に蠢く関係諸国やグローバル勢力の全貌の解明こそ、あらゆる諸国が直面している間接支配問題の解決に向けた基礎的作業となるのではないかと思うのです。(おわり)
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