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2021-09-16 00:00
(連載1)新型コロナウイルスの起源問題への日本の無関心
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者数は、世界で2億1450万人以上、死者数は447万2486人となった(AFPが8月27日の日本時間午後7時に集計)。人的、経済的、社会的な被害は甚大である。そこで、COVID-19は何が原因で何時、何処で、どのように発生し(起源)、それが如何に世界に広まったかを究明するのは、今後このような事態を繰り返さないためには不可欠というのは説明するまでもない。しかし、COVID-19感染者が最初に中国の武漢で発生したこと、今日の米中対立にも直結した政治問題になってしまった。わが国では、その起源については、ウイルス専門家の間ではどう論じられているのかほとんど報じられていないが(おそらく何も追求していないのだろう)、政界でもメディア界でも突っ込んで論じる雰囲気はほとんど見られない。
米民主党政権の対応
米国では今年5月下旬にバイデン大統領が、政府関連の18の情報機関からなる「情報コミュニティ」に、コロナ発生源(起源)の問題に関して90日間で調査を終えて報告書を出すよう指令し、大統領は8月24日に報告書を受け取った。これがどれほど具体的で詳しいものか知らないが、報告書には機密情報も含まれているとして公表はされず、8月27日に、米国家情報長官室から機密情報が除かれた僅か2ページの簡略な「要旨」がホームページに発表された。明らかに、民主党政権下の「政権の情報機関」による報告として、中国にも最大限の配慮をした「非政治的、客観的」と思われるものだ。結論はわが国や世界のメディアが報じたように、COVID-19は武漢の海産物市場から動物を通じて人に感染した可能性と、武漢ウイルス研究所から「事故」などで流出した可能性の併記だ。何れも可能性レベルの仮設で、真相の解明には「初期の新型コロナウイルスの感染例の疫学的データを完全に理解することが必要で、それが入手できたらわれわれの仮説の評価が変わる可能性がある」とも述べている。
「要旨」を丹念に読んだ。ただ、関わった情報機関や専門家の間で幾つかの異なった立場があることは分かるが、ほとんど全ての立場は中国側が生の資料への専門家たちの接近や、特に感染症発生時前後の情報を完全に隠匿して調査を許さないので、これは仮の結論だとしている。つまり中国の情報開示がない状況下では、何れの説も仮説の域を出ず、中国が情報隠匿の姿勢を全く変える意思がないので、「真相究明は永遠に不可能」との言も出ている。ただ、ウイルスは「生物兵器として開発されたものではない」「おそらく遺伝子操作での機能獲得の結果ではない」ということは言われているが、その理由は一切説明さられていない。この今日の米政府の情報当局作成の、簡略で立場もばらばらの「要旨」は、ある意味で中国側がこれは「調査ではなく米政権による反中国の政治的行動」だと非難しているので、そのような批判に対して、バイデン政権の情報諸機関の非政治性、客観性をあえて示そうとするものと見ることも可能だ。
しかし逆に、8月29日のブリンケン米国務長官が中国の王毅国務委員兼外相に電話をかけて対談した時、王毅は「でっち上げた調査報告に断固反対する」と述べ、「米国の中国への態度次第で、今後中国がどう米国に対応していくかを検討する」と半ば恐喝的に述べた。このような中国を刺激しないための民主党的な「極めて政治的な対応」と見ることも可能だ。ただこの「要旨」には「結論を出すためには、中国の協力がどうしても必要だ。しかし中国は今日も国際的調査を妨げ、情報の共有を拒否し、米国や他国を攻めている」と明確に述べている。つまり、中国が協力しない限り、何も断定的な結論を出せないと述べているだけだ。それが事実としても米国の18の情報機関が90日かけて出した報告書の「要旨」としては、全く期待に応えていない、きわめてお粗末なものと言わざるを得ない。(つづく)
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