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2021-09-23 00:00
(連載2)「『敵の出方論』の不使用」の理論的検討
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
このように、「マルクス・レーニン主義」の核心が、レーニンのいう暴力革命とプロレタリアート独裁であるとすれば、日本共産党がマルクス・レーニン主義を党の理論的基礎とする限り、「暴力革命」はマルクス・レーニン主義の重要な要素であるから、理論上「暴力革命」を否定することはマルクス・レーニン主義の否定になり、論理矛盾である。上記宮本氏も、「敵の出方論」を少なくとも理論上「暴力革命」の一形態と認識しているからこそ、マルクス・レーニン主義(「暴力革命とプロレタリアート独裁」)の革命論の重要原則と規定したのである。
ところが、一方で、日本共産党は「多数者革命」(「平和革命」)を党の革命戦略として主張している。すなわち、改定党綱領四(「民主主義革命と民主連合政府」)において、「日本共産党と統一戦線の勢力が国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めるならば、統一戦線の政府・民主連合政府をつくることができる。」と規定している。不破氏も、「イギリスなど一部の国では労働者階級が議会で多数を握り合法的な手段で政治権力を獲得できる可能性がある」とのマルクス・エンゲルスの結論を引用し、「平和革命」の可能性について述べている(不破哲三著「前掲書」269頁以下参照)。すなわち、日本共産党は、理論上「暴力革命」の一形態である「敵の出方論」と同時に、「多数者革命」(「平和革命」)を党の革命戦略として主張しているのである。
このように、日本共産党は、改定党綱領四により、議会の多数を得て民主連合政府を樹立し、社会主義社会へと進む「平和革命」を目指していると言えよう。しかし、同時に、他方では、上記の通り、理論上「暴力革命」の一形態である「敵の出方論」を容認し、さらに、上記四では、「民主連合政府の樹立は、支配勢力の妨害や抵抗を打ち破る戦いを通じて達成できる。」と規定し、「暴力革命」の可能性を完全には否定していない。したがって、日本共産党は、「平和革命と暴力革命のそのどちらも放棄しない。敵の出方次第で使い分ける。」(佐藤優ほか著「真説日本左翼史」2021年講談社現代新書217頁参照)と評価するのが、日本共産党が立脚する「マルクス・レーニン主義」(「暴力革命とプロレタリアート独裁」)の理論的帰結と言えよう。
したがって、今回の、理論上「暴力革命」の一形態である「敵の出方論」なる表現を使用しない旨の志位委員長発言をもって、直ちに「敵の出方論」を党の革命戦略として完全に放棄したと評価するのは危険であろう。なぜなら、「敵の出方論」なる「表現」の不使用と「中身」の放棄とは同じではないからである。よって、日本共産党は、公党として、理論的には「暴力革命」の一形態である「敵の出方論」なる「表現」の不使用のみなのか、「中身」も完全に放棄したのかを、国民に対して明確にすべきである。(おわり)
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