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2007-09-26 00:00
違憲の疑いある裁判員制度
苦瀬雅仁
大学教授
9月24日付け本欄への大藏雄之助氏の投稿「裁判員制度批判」に賛成である。ここでは、大蔵氏の触れなかった別の観点から、裁判員制度の問題点を指摘してみたい。それは、この制度には違憲の疑いがあるという観点である。
日本国憲法は、第37条第1項で「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」とするとともに、第76条第3項において「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」と規定している。また第80条第1項では「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する」とするとともに、同条第2項で「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける」と定めている。さらに第78条は「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない」とその身分を保障している。また、逆に言えば、問題のある裁判官は公の弾劾により罷免することができるということである。
これらの規定は、日本国民が、質の確保された専門家であって、また身分保障があることによって独立して職権を行うことが確保された裁判官によって構成される裁判所による裁判を受ける権利を保障したものである。他方、裁判員制度においては、この日本国憲法の規定した条件を満たす裁判官ではない裁判員が裁判所の判決を決定する権限、すなわち裁判官の権限を行使することになりかねない。裁判員選定の実際を想定してみれば、裁判員の偏りや質の問題が危惧される。通常の成人にとっては、自分の仕事を抱えて忙しいなかで、専門的知識もなく、また有罪判決を下せば怨まれるような危険も冒しつつ、裁判員になることは容易ではない。と言って、責任ある地位にある識見の高い人は、裁判員辞退の条件を満たす可能性が高い。とすると、ある種の政治的活動家、市民活動家、宗教活動家などの人々が、普通の多数の国民を押しのけて、より高い割合で裁判員になる可能性があるとは言えないだろうか。理論的にも、実際的にも、裁判員制度は憲法の趣旨に反する違憲の制度である可能性が高い。今からでも撤回に向けた検討を始めるべきである。
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