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2021-10-07 00:00
(連載2)カーボンニュートラルと原発問題―COP26を前にして
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
専門家や実業界の多くは、日本でこの目標を達成するには、単に各企業が個別の諸対策を講じるだけでは不可能で、戦時のように日本全体の産業構造を根底から変えなくてはならないし、そのためには甚大な犠牲や痛みも生じると認識している。勿論それは今後8~9年では到底達成不可能だとも分かっている。しかし、企業としても脱炭素が流行のファッションである以上、その目標を掲げないと企業イメージは悪化し、株価は低落し、企業協力は断たれ、融資は受けられず、人材も集まらない。また政府としても、世界の流れに取り残されて孤立する訳にはゆかない。この宗教に最も熱心な欧州は、この7月に国境炭素税(国境炭素調整措置)を発表した。2023年から、EUの輸入業者は炭素税を課することになるので、脱炭素に熱心な姿勢や実績を示さないと、企業によっては大きな損害が生じる。
この問題に関連して、最近私が注目した3つの記事がある。①「ガス急騰、欧州に試練迫る――物価高・景気鈍化の懸念」(日経新聞 9月27日)、②「ガスはあるのにすぐ無くなる」(露紙 コメルサント 9月21日)、③「中国、深刻な電力不足――アップル・テスラ向け工場停止」(讀賣新聞 9月28日)である。
①と②は、この夏から9月にかけて、欧州で天然ガス価格が異常に急上昇したことに関する記事だ。その理由は、今年は冬場の冷え込みが長引いて暖房消費が増え、ガスの貯蔵が減ったことと、風力発電がここ数週間振るわず、ガス需要が高まった、というものだ。欧州では脱炭素の立場から石炭発電はすでに廃止している。またロシアをはじめ天然ガス輸出国は、輸出の余力はあるのに、更なる価格上昇を期待して売り惜しみをする。欧州で消費されるガスの4割近くを輸出しているロシアだが、②の記事では、欧州産業に悪夢が生じており、厳冬の季節になるとどうなるか想像もつかない。欧州が熱を入れている「再生可能エネルギーは、ガス発電の代替が可能なほどまだ技術的に発展していない」と、ストレートに述べている。ガス輸出がまだ当分続くとの自信を持っているのだ。
③は、中国当局が環境対策として、石炭火力発電所の発電抑制に動いたことにより、全国の3分の1の地域で電力供給が制限された。その結果、例えば江蘇州では、今月下旬から、1,000社を超える企業が2日操業した後は2日停止しており、日本企業にも影響が出ている、というものだ。中国は完全な脱炭素を2060年に達成と声明したが、今日でも石炭火力発電所を数多く新造している国だ。CO2 排出量も、世界一で、全世界の30.9%を占める(日本は3.2%)。しかし習近平主席が9月21日に国連総会のオンライン演説で、脱炭素に中国も協力するとして、石炭発電所の国外での建設は今後行わないとした。このようなトップの発言が今日の中国の電力不足に関係している。(つづく)
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