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2021-10-29 00:00
(連載4)アフガニスタン撤退と西側の自己敗北主義
河村 洋
外交評論家
急な撤退はヨーロッパの同盟諸国を驚かせた一方で日本国民がアメリカの敗北主義をある程度は受容している背景には、アメリカが戦略的な重点を中国に振り向けることを切望しているという事情もあるが、それが可能になるためには中東の安定が必要である。今や中国は一帯一路構想に見られるように、東アジアの大国にとどまらない。実際に中国はCPEC(中パ経済回廊)を通じてアフ・パック地域で力の真空を埋めようとしていて、インドがそれに警戒感を抱いている。
これはインド太平洋地域での対中戦略パートナーシップとなるクォッドの信頼性にも関わる重要な点である。インドの地政学戦略家、ブラーマ・チェラニー氏は『日経アジア』紙への8月30日付けの投稿に際して「バイデン氏がアフガニスタンにもたらした災いで、最大の敗者はインドだ。アメリカはインドの友好国ではあるが、その一方で我が国の宿敵パキスタンに武器を輸出し、中国という拡張主義の怪物の台頭に手を貸してインドの安全保障を脅かしてきた」とツイートしている。
留意すべきことに、H・R・マクマスター元国家安全保障担当大統領補佐官は2017年の国防戦略作成でテロとの戦いから中国とロシアを相手にした大国間の競合に政策の重点を移したが、それでも今回の撤退には強く反対している。地政学と戦場の状況に加えて、タリバンとの対話が可能なのか考え直す必要もある。ロバート・ケーガン氏は『ワシントン・ポスト』紙2018年10月24日付けの論説で、トランプ氏がジャマル・カショギ氏殺害で全世界から非難されていたサウジアラビアのモハマド・ビン・サルマン皇太子と緊密な関係にあることを批判していた。問題点は独裁者がどれほど改革的に見えても、本質的に圧政志向であるということだ。タリバンに関しては人道的な問題での外交交渉なら有り得るが、彼らが穏健になったように見えるというだけで政権の正当性を認めるべきではない。マクマスター氏は西側が引き下がる時にタリバンと対話を行なうことが無意味なことは、カブールを奪取した彼らの慢心ぶりを見ての通りだと述べている。
本稿は非常に長くなったが、我々はアメリカばかりかヨーロッパからアジアに至る国際社会でこれほど多くの戦略家達がトランプ・バイデン両政権の撤退に異を唱えていることに留意すべきである。西側民主主義が中世の野蛮に蹂躙されても黙認するような、無責任な歴史観測者であってはならない。バイデン政権と国際的なステークホルダー達が撤退による混乱を鎮めるため、アフガニスタンに何をするのかを責任をもって見守って行こう。(おわり)
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