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2021-11-04 00:00
(連載3)『砂の器』『破戒』、そして『人形の家』
葛飾 西山
元教員・フリーライター
夫妻は結婚に際して下賜される一時金を固辞してアメリカで生活することになる。当面これまでの皇族時代からの預貯金で生活するのではとも言われているが、眞子さんのこれまでの言動とその意志からすると、これすら手をつけないのではないか。これに手を付けることは結局皇室制度に依存することになってしまい、それこそご都合主義の誹りを免れられない。圭氏の司法試験不合格も報道されたが、こうなる可能性も想定の一つであったのではないか。これまでのような優雅な生活などはできるはずもなく、瞬く間に家計は火の車になるであろう。それも眞子さんはもとから承知なのかもしれない。
周囲は民間人となってもなお優雅なセレブの生活をしている姿を望むであろうが、高い学力と知性と留学経験を備えたご本人にはそもそもそのような気はないではないか。でなければ最初から家系のバックアップが何一つない一般人(昔の表現を使えば布衣)の圭氏と一緒になろうとは考えないだろう。どんな苦境が予想されようともそれを甘受して一人の女性として、自分の足で立って、自分で選んだ伴侶と生きてゆく決意が感じられる。まさに一人の女性が自我に目覚め、全てを捨ててでも父親の人形、夫の人形としての桎梏から解放され、自分の足で生きてゆくことを選んだ女性を描くイプセンの『人形の家』と二重写しに感じられてならない。
図らずも今回の小室夫妻の結婚は、「砂の器」「破戒」「人形の家」で描かれた結末をつなぎあわせたような結末になった。これまでの経緯を反省するのは、それは小室夫妻ではない。我々国民の側ではなかろうか。国民一人一人だと良識はあっても、それが群集心理となった瞬間から、「伝統」の名のもとに宿命に生きることを要求し、高潔さを要求し、さらに「知る権利」を盾に罪も犯していない一般人に説明責任だけでなく謝罪まで要求し、さらに生い立ちまでを暴き立て、この社会ではもはや生きてゆけない心理状態に追い込んでしまった。
それでいて小室夫妻が日本からいなくなれば、発火点となった初老の女性と男性の恋愛感情のもつれに端を発した金銭授受の問題などは犬も喰わないものとなり、やがて話題にすら値しなくなるであろう。大衆としての我々国民は猛省しなければならない。「砂の器」「破戒」「人形の家」で問題提起された状況からは何一つ進歩していない現実を世界に露呈してしまったことを。そして貴重な皇族の一員を異国に放逐する形になってしまったことを。そしてこの間のバッシングについては日本と皇室の伝統のために正しいことしたまでだという心理のまま、いつしか忘れ去られてしまうであろう恐ろしさを。(おわり)
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