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2007-09-28 00:00
ミャンマーの流血阻止に積極的に動け
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
僧侶を中心とした10万人規模のヤンゴン(ミャンマー)の反政府デモでついに死者が出た。治安部隊発砲の巻き添えになって、日本人取材記者にも犠牲者が出た。国連安保理は26日、議長が「懸念表明」を読み上げ、軍事政権に自制を呼びかけたが、デモが収まる気配はない。米英は軍事政権に対する制裁を主張、これに反対する中ロとの溝が深まり、安保理は、北朝鮮、イランに対する制裁論議と同じ構図を呈している。
日本政府は、在京のミャンマー大使に自制を求めただけで、現在は安保理非常任理事国でもないため、静観している。町村官房長官は、悪名高い軍事政権にテコ入れしている印象をうすめるためか、「日本はミャンマーに対する最大の支援国ではない。軍事政権に対する最大の支援国は中国だ」と記者会見で釈明したが、1954年の国交樹立以来の累計では日本がダントツの最大支援国だ。1989年の軍事政権出現以来の直接投資でも累計2億ドルを超え、最近1年間のODA(無償資金協力と技術協力)は2000万ドルに達している。
日本は北朝鮮に対しては、対話と圧力といいながら、圧力一辺倒の強硬策で臨み、「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」の前提条件を変えていないが、これは本来、日本の外交スタイルではない。ミャンマーの軍事政権に対しても「強圧的な欧米流の制裁はアジアには通用しない」として対話の余地を残し、米国主導の制裁論とは一線を画し、細々とながら援助を供与してきた。ヤンゴン空港整備や水力発電所改修の援助も「人道支援」の名の下に進めてきた。
民主化闘争の先頭に立つアウンサン・スーチーさんが、1995年と2002年に一時的に軟禁状態から解放されたのは、日本政府の説得が効を奏し、軍事政権が柔軟性を示したものだと説明してきた。しかし今回、軍事政権が僧侶に発砲を命じ、死者を出したのは、1988年ヤンゴンの流血事件で学生・市民1000人以上が軍の発砲で死亡した悪夢の再来を思わせる。
ビルマ(旧称)は大の親日国であり、日本人も竹山道雄の『ビルマの竪琴』の影響で「ビルメロ」(ビルマにメロメロの人)が多い。安保理が動けず国連の仲介には限界がある。この際、閣僚級の「特使」を現地に派遣して、日ごろの支援をテコに「対話」の成果を生かしてみてはどうか。
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