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2021-11-07 00:00
(連載1)プーチンの「平和条約」発言の深刻な問題点
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授
10月21日にロシアのソチで、プーチン大統領が各国の国際問題専門家やジャーナリストを集めて毎年恒例の「バルダイ会議」を開催した。日本の各メディアは、日本人研究者の質問への回答として、日露平和条約の締結問題についてのプーチン発言を「平和条約への意欲」などとして報じた。わが国のメディアの報道を読んで、その内容に私は深刻な懸念を抱いた。それは、プーチンが「平和条約締結に意欲」といった見出しが躍ったが、「平和条約」に対する日露の解釈が全く異なるということは、一般の人には理解しにくい報道になっているからだ。それはバルダイ会議における日本専門家の質問のし方にそもそも問題があると私は強く感じたが、わが国のメディアは日本専門家の質問内容は報じていない。また、それに答えてプーチンが述べた露側の「平和条約締結の意欲」が何を意味するかも充分解説していない。
したがって、このような情報を与えられた一般の読者は、いやこれを報じているメディア関係者や対露政策に関わる政治家の一部も、安倍首相以来の日露の協力関係を岸田首相や今後の日本のリーダーたちが続ければ、プーチン政権下で領土問題も少なくとも幾らか前進して、やがて平和条約締結に至るのではないか、との非現実的な期待を抱くことになる。これが私の深刻な懸念である。もちろん、プーチンが日本の指導者に求めているのは、安倍首相が退陣に当たって「断腸の思い」と述べた彼の対露政策の継続である。つまり、経済協力などを推進すれば、平和条約締結にいたるとの「幻想」を抱かせ続けることである。バルダイ会議での発言においても、岸田首相に対してそのシグナルを強く出している。
バルダイ会議の発言録はロシアの大統領府のサイトに全文が掲載されている。以下は日本人ロシア研究者A氏の質問と、プーチンの回答である。大統領府のサイトには実名が記されているが、個人批判が目的ではないのでA氏とする。
A氏:大統領あなたのご報告は、国境はもはやアナクロニズムだとのテーゼを含め、私にとって大変興味深いものでした。たしかに今日において国境紛争その他が最も深刻なのは北東アジアです。あなたと安倍首相は、このギャップを埋める新たな平和条約を模索されてきました。しかしこの2年間に日本の首相は2回も変わり、あなたと会わないままでした。今後の2国関係の将来、特にロシアと日本の間の平和条約の展望についてどう見られていますか。
プーチン:ええ、たしかに日本の内政では、政治舞台の交代はかなり早い。しかし日本とロシアの国民の関心に変化はありません。その基礎にあるのは、平和条約締結に至る諸関係を最終的に調整しようという意図です。われわれは日本の政治家たちの顔ぶれが変わっても、それ(平和条約)に向かって努力します。岸田首相は大変経験の豊かな人物で、(外相として)国際問題に携わってきました。彼は政治的な意味で、安倍元首相に近い人物です。その意味で、われわれは日本の対露政策の立場は継続されると思っています。われわれは安倍首相の時代に、日露関係を新たな水準に引き上げるために、多くの共同の活動、共同の仕事を成し遂げてきました。われわれが強く望んでいることは、この共同の活動が今後も同じように続けられることです。(つづく)
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