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2021-11-07 00:00
時代錯誤な日本共産党の「非武装中立」
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
日本共産党は、今回の総選挙で公示前の勢力12名から2名を減らして10名となり敗北した。共産党と「閣外協力」の合意をした立憲民主党も公示前の勢力110名から14名を減らして96名となり惨敗した。共産、立憲とも事前の情勢調査からすれば、予想外の敗北と言えよう。このため、立憲枝野代表は、惨敗の責任を取って辞任を表明し、代表選挙が行われることになった。しかし、共産志位委員長は、今でも立憲との「閣外協力」の合意を評価し、その継続を求めている。
両党、特に立憲の敗因については様々な説があるが、筆者は選挙戦略としての「閣外協力」合意の失敗が大きい、と考えている(11月2日付グローバル・フォーラム論壇「議論百出」掲載拙稿「立憲民主党は共産党との閣外協力を解消せよ」参照)。すなわち、共産との「閣外協力」の合意により、立憲と共産がこれまで以上に接近したため、「共産党アレルギー」などで、このような動きに不安を感じ、これまで立憲を支持していた無党派中間層の大量の票が立憲から離れ、日本維新の会や国民民主党に流れた、と筆者は分析している。
とりわけ、立憲の最大の支持母体である連合が「閣外協力」に強く反対したことは立憲にとって致命的と言えよう。そのため、連合組合員の票が行き場を失ったとも言われているからである。組合員にとっても気の毒である。選挙後の共同通信の一般国民世論調査によれば、「野党共闘」見直しが61%に上っている。共産の敗因は、「閣外協力」の合意により、共産が候補者一本化のため、小選挙区における立候補者を激減させたことが致命的である。このため、小選挙区・比例区ともに票を減らした。共産は立憲との「閣外協力」を解消しなければ、今後も党勢はじり貧になるであろう。
しかし、立憲・共産の最大の敗因は、「閣外協力」など選挙戦略の失敗と同時に、「安全保障政策」にある、と筆者は考える。総選挙期間中の北朝鮮による度重なるミサイル発射、中ロ艦隊による日本近海での共同威嚇行動、中国の覇権主義的軍拡、尖閣危機、台湾有事の危険性など、北東アジアの安全保障環境は悪化の一途である。
にもかかわらず、共産は、いまだに、自衛隊違憲・解消、日米安保廃棄を主張している(党綱領四参照)。まさに、時代錯誤の令和版「非武装中立」である。これに対し、立憲は自衛隊合憲・日米安保容認であるが、「非武装中立」の共産と「閣外協力」の協力関係に入ることによって、共産の影響を受けて立憲の安全保障政策が歪められ、極めて不安定になる危険性がある。現下の厳しい安全保障環境において、このことを危惧した賢明な日本国民も少なくなかったと言えよう。
旧日本社会党は「非武装中立」を外交安全保障政策の基本方針としていた。その内容は、憲法前文及び9条の恒久平和主義の理念に基づき、米国の世界戦略とされる日米安保条約(日米軍事同盟)に反対し、同条約に基づく「日米共同作戦」や「海外派兵」の可能性がある自衛隊を憲法9条違反としてこれを容認せず、非武装且つ非同盟中立により国家及び国民を守るという旧日本社会党の外交安全保障政策である(日本社会党委員長石橋政嗣著「非武装中立論」1980年同党中央本部機関紙局刊行参照)。
上記の旧日本社会党の「非武装中立」は、今でも、自衛隊違憲・解消、日米安保条約廃棄を主張する共産党の外交安全保障政策と重なり合い共通する。しかし、「非武装中立」は今から40年以上も前の旧日本社会党の政策である。それから40年以上が経過し、ソ連崩壊、中国経済的台頭、米中新冷戦、中国覇権主義的軍拡、北朝鮮核武装など、軍事技術の驚異的発達を含め、北東アジアの安全保障環境は激変した。
そのため、超大国は別として、今や一国だけでは国の独立と国民の生命・安全を守ることができない時代である。したがって、各国にとっては、集団安全保障体制は必要不可欠となっている。この観点からして、共産党の「自衛隊違憲・解消、安保条約廃棄」すなわち令和版「非武装中立」の主張が、現実離れしていることは明らかである。
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