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2021-11-08 00:00
勝負弱い岸田氏に負けた野党を考える
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
今回の選挙に関して岸田内閣は、まだ発足したてで、何もしていないので「岸田内閣の審判」ということではないが、私個人の印象が「岸田文雄氏は選挙がかなり弱い」ということだったことからすると考えるところがある。私が国会新聞に在籍していた時の話であるが、岸田氏が応援に行った候補が落選するという場面を何度も目撃している。当時(10年以上前の話ではあるが)、宮城県を回った時に岸田氏が応援演説に来たが、なんというか「華」がないのである。真面目でなおかつあまり争いを好まないのはわかるが、それでは政治の世界では戦えないと感じた。宏池会というと「お公家衆」という言い方をする古い政治評論家は少なくないのであるが、まさに、厭戦的な気質の議員が少なくない。そのためにただ批判しかしない野党と、なかなかうまく戦えないのである。特に、現在70代というのは、まさに「団塊の世代」であり、なおかつ潜在的な保守層である若者の気持ちをくみ取れるようなところは少ない。その意味ではさまざまな人が苦戦を強いられたのではないか。弱い、あまりカリスマ性のない総裁、そして、今は論評を控えるが少々くらい感じの幹事長、そして若者の心をくみ取れない、流行に取り残された永田町人では、なかなか選挙はうまくゆかなかったろう。はっきり言って、野党が勝手に転んでいるから何とかなっているが、まともな野党がいればとっくに政権交代をしているのではないかという気さえする。まさに、このような与党に負けている野党は深刻なひどさということになる。戦う姿勢のない与党と、批判しかできない未来が見えない野党。低投票率もさもありなんである。
さて、まずはマスコミの記事ではわからない話から先にしよう。10月27日くらいから、「自民党が大幅に議席を減らす」という情報が多く入っていた。実際に30日の前日の期日前投票出口調査でも、また31日の16時段階のNHKの出口調査でも「自民党単独過半数ならず」という結果が出ていた。NHKに至っては「自民党210議席もありうる」という報道であったのだ。私は、公示日の段階で自民党246議席±5というような予想をしていたので、かなり外したなと思い、自分の予想を先に伝えていた人々には、18時の段階で訂正のお詫びの電話をしたものである。当然にNHKの20時のニュースの段階では「自民党単独過半数割れか?」というような見出しで選挙開票速報番組が始まると思っていた。実際に、20時の段階では岸田首相の顔は雲地、枝野立憲民主党代表はかなり浮かれた表情であった。
しかし、ふたを開けてみれば、そうではなかったということになる。まずその特徴を見てみよう。まず、与野党問わず「大物」といわれる議員が落選または苦戦を強いられた。次に、自民党・立憲民主党が議席を減らし、維新が議席を伸ばした。最後に自民党単独過半数・与党絶対安定多数という状況になった。さて、この状況からみて言えることは「世代交代」「まともな野党の窮乏」ということであろう。「口だけで実績がない人」や「批判しかできない議員」の落選が興味深い。石原伸晃元幹事長に対する選挙戦報道で「お前何やったんだ」というようなヤジが飛んだのが全国に放映されたが、このヤジが象徴するように、「大物」であるからといって国民のために汗をかかない人々がなお票を得られるわけではない好例となった。当選回数を重ねた議員でもしばしば小選挙区で敗れた事実からは、与野党に関係なく、「ジェネレーション」間の問題としての国民の批判が多くあったものと考えられる。
もう一つは、反対ありきの野党とそうでない野党との明暗がわかれたことである。実際に立憲民主党は、共産党と選挙協力したにもかかわらず議席を減らした。これは「確かな野党」共産党との連携が完全に裏目に出たということであり、トヨタ労組などの離反が響いたということになろう。逆に、例えば頓挫したとしても「都構想」などといったビジョンを提示して、しっかりと政策を出した実績があり、国会対策でも是々非々で対応した維新の方が高く評価されている。まさに「非自民」の票の受け皿は、立憲ではなく維新になったという象徴的な出来事ではないか。若者を中心にした55年体制を経験していない有権者からは「自民党に反対する社会党」のような存在が求められるはずだ、という既成概念が希薄化していることを意味しており、我々も、そろそろ老害といわれる状態になっていないか考える必要が出てきた。そして、最後にマスコミはこれらの「トレンド」を全く読めていなかったことも注目すべきだ。まさに、マスコミこそ、若返りが必要なのかもしれない。最も批判されているのは、マスコミの方かもしれないのである。
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