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2021-11-22 00:00
真珠湾攻撃80周年の日米同盟
鍋嶋 敬三
評論家
日本が太平洋戦争に突入した真珠湾攻撃(1941年12月8日)から80周年を迎える。その前の80年を振り返れば、日米和親条約(1854年)で開国、幕末の混乱、明治維新後の近代国家建設の途上も日清、日露戦争、第1次世界大戦、日中戦争と戦争に明け暮れた。歴史的に中国と関わりが深かった日本に対して、当時の新興国・米国は西部フロンティア開拓の先に中国大陸を目指し、ペリー提督の米東インド艦隊は1853年、浦賀来航に先立って香港、上海に入った。19世紀末から20世紀半ばにかけて中国大陸、太平洋をめぐる日米の対立に終止符が打たれたのが1945年8月15日である。現在、米国は中国共産党政権の習近平国家主席が率いる権威主義体制との「体制間競争」に直面する。米国は太平洋戦争の後も朝鮮戦争を皮切りにベトナム、アフガニスタンと70年間、戦争に明け暮れ国力を消耗、国内の分裂を招き、唯一の「超大国」としての威信と指導力を失った。今や、中国やロシアなどの権威主義国家群と対峙するため、日欧豪印など民主主義国家群を糾合しなければならなくなった。
その流れの中で日本がアジアにおいて唯一頼りになる民主主義国家であることに米国は改めて着目した。昨年の真珠湾攻撃記念日に発表された第5次アーミテージ・ナイ報告書「2020年の日米同盟」は、日本が歴史上初めて「同盟で対等な役割を果たしている」と高く評価した。その日本の変容は安倍晋三元首相の功績に帰すべきだとした。その理由として集団的自衛権の限定的行使を可能にしたこと、米トランプ政権が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)の完結、そして「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の構想によって、中国の反自由主義的な野望に対抗する戦略的枠組を作り上げたことだと具体的に列挙した。
米国の日本重視は、バイデン大統領が就任後初めて迎えた外国首脳である菅義偉首相との会談(2021年4月16日)の共同声明で明記した「台湾条項」が典型的に示した。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」した条項は1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領との共同声明以来52年ぶりである。米政府高官が首脳会談に先立って台湾問題で「中国に明確なメッセージを送る」意向を示していた。台湾への軍事的圧力を強めてきた中国に対する強い警告であり、日米共同声明に明記したことが重要である。尖閣諸島に対する日米安全保障条約第5条の適用を米国が文書で再確認した。日本政府の要請もあるが、米国としても繰り返し再確認することで対中同盟関係の維持に欠かせないと判断しているのだ。バイデン大統領が菅首相との共同会見で「日米同盟および共有する安全保障への支持が『鉄壁』であると確認した」と語ったのがその表れである。
バイデン大統領と習近平主席の米中首脳オンライン会談(11月15日=米時間)について、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「戦略的安定に向けた協議」を進めることで一致したことを明らかにした。米国防総省発表の「中国軍事力2021年次報告」は中国の核弾頭保有数が2030年に少なくとも1000発になると予測、中国の急速な核・ミサイル増強に危機感が強まる。米国の核抑止力に依存する日本は米中協議の行方にも大きな関わりがある。菅・バイデン共同声明では「抑止力、対処能力の強化、サイバー、宇宙を含む全ての領域を横断する防衛協力を深化させ、拡大抑止を強化することにコミット」した。米国の核を含めた戦略に日本も加わっていくことを意味する。アーミテージ・ナイ報告で日米の「パワー・シェアリング」を強調し、日米同盟は「共通の戦略的ビジョンの実現に努力しなければならない」と結論付けているのはそのためでもある。岸田文雄首相は国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の3文書の改定を公約したが、近く想定される岸田・バイデン首脳会談は日米の安全保障体制の強化をさらに進める契機になるであろう。
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