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2021-11-22 00:00
(連載2)米中露の戦略的安定対話
笹島 雅彦
跡見学園女子大学教授
一方、中国との対話はどうか。新STARTに中国は参加していない。米国はロシアとの核軍縮交渉に中国も参加するよう促してきた。しかし、中国側に応じる気配はない。これは、中国側は核兵器の総数で、米露と均等(parity)になることを目指しているため、とみられている。また、米国の核戦力が老朽化しているのに対し、中国は核兵器の近代化を着々と進めている。中国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の地下施設を多数建設しており、「このような核戦力の質的・量的変化は、最小限の核戦力を持つとした従来の態勢からの明確な逸脱を意味する」(米議会諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」2021年版報告・11月17日公表)。
バイデン大統領と習近平国家主席によるオンライン形式の米中首脳会談が同月15日(米国時間)に行われ、偶発的な軍事衝突が起きないよう、対話を継続していくことで一致した。また、バイデン氏は、中国の急速な核戦力増強についても懸念を示したようだ。米露に比べて桁違いの少なさだが、2030年までに少なくとも1000発に増やすことが予測されている(中国の軍事・安全保障に関する年次報告書・11月3日国防総省公表)。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は翌16日、米ブルッキングス研究所のオンライン講演会に応じ、質疑応答の中で、米露首脳会談で、「戦略的安定性に関する協議」を進める可能性を検討していくことで一致した、と明らかにした。同氏は「両国の競争が衝突に発展しないようなガードレールを確保するための取り組み強化がさまざまなレベルで行われるだろう」と語った。この首脳会談は平行線に終わり、何ら進展をもたらさなかったようにみえるが、核については局面転換につながるかもしれない。
ただ、戦略的安定のために具体的な協議がどう進められるかについてはわからない。長い歴史の中で、正式な枠組みにまで深化した米露の軍備管理交渉とは事情が異なり、これから最善の方法を模索することになるという。即、核軍縮交渉がスタートするわけではない。それが米中露3か国の枠組みか、米中、米露2国間ずつの枠組みなのかはこれからの話だろう。今後、米中の戦略的安定性対話が開始されるとなると、中国中央軍事委員会副主席の許其亮・空軍上将が窓口になる、と観測されている。核やサイバー安全保障、危機時の通報方法などが協議対象となる。
一方で、バイデン大統領は首脳会談終了後、来年2月の北京冬季五輪の外交的ボイコットを検討する意向を表明した。米中関係は緊張感をはらみながら、戦略的安定性に向けた新局面を迎えることになる。米中間でも36年前のジュネーブ原則を共有できるだろうか。中国は、対話のポーズを示しながら、何ら核軍縮の成果を出すことなく、着々と核軍拡を進める構えかもしれない。誤算を生むことなく、破局を回避するための道筋を探る険しい難路が待ち構えている。(おわり)
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