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2021-12-07 00:00
(連載1)日本の水際対策は機能している
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
オミクロン株の発見で「全世界の全外国人の入国拒否」の措置が導入された。大学では滞留していた国費留学生の来日が開始されていたところだった。その他の分野でも、煩雑な手続きをへて不可欠の招聘をアレンジしていた関係者は落胆するとともに、対応策に追われているところだろう。岸田首相によれば、オミクロン株の正体が不明であるために、予防的措置として1か月の時限的措置として導入したものだという。私としては、この緊急措置が1カ月で終わることを祈っている。
日本の「水際対策」は、どうも評判が良くないようだ。「デルタ株の際の水際対策の不手際が感染拡大を許した」という定説になっている。確かに2020年初めの新型コロナの蔓延初期において、日本の入国管理は、他国に比して後手後手ではあった。本格的な入国規制を導入してみると、通常の人員体制では全く作業が追い付かなかったために、2020年3月下旬から数か月にわたって成田空港などにおける検疫体制の管理に自衛隊が派遣されたこともあった。それから一年半以上の月日が流れている。私は新型コロナ蔓延の初期段階から人の移動の回復を図るために、空港税の大幅な増額などを視野に入れても、検疫体制の強化を図るべきだ、と書いてきている。
現在の日本の検疫システムは、既存の施設をやりくりさせ、外注企業の人員を動員して、何とか回している。そのため一日あたりの受け入れ人数に上限を設けざるを得ない。今回の措置を契機にして、あらためて検疫体制の充実を考えていくことは、段階的に人の移動を回復させていくためにも重要になってくるだろう。
とにかく徹底して入国を禁止するのが正義だと考えているような鎖国派の方々も目立つが、帰国してくる日本人の入国も禁止するのは、憲法上の人権規定の問題になるし、邦人保護の趣旨からすれば本末転倒な事態だ。それ以前に、入国規制で永遠にウィルスの侵入を防ごうという考えは、新型コロナの感染性を無視した非現実的な考えである。社会経済活動を根本的に阻害させ、しかも不当な偏見も助長させることによって、日本の国力を著しく減退させる自殺的な考えでもある。(つづく)
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