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2021-12-20 00:00
多極時代のG7の重要性と日本の役割
渡辺 まゆ
(公財)日本国際フォーラム理事長/上席研究員
主要7か国(G7)サミットが1975年にフランス郊外のランブイエ城で開幕してから、もうすぐ半世紀を迎えようとしている。1973年の米・西独・仏・英四か国蔵相会議に端を発するサミット発足当時の共通課題は、米国で生じた経済危機への対応であったが、その後、サミットの役割や意義は、時代とともに変化してきている。この50年の間に国際社会の多極化・複雑化が進み、2008年にはG20という多国間枠組みも誕生した。その一方でG7は極めて高度に制度化されることになる。近年、中国やインドといった新興国が台頭し、日米欧主導の世界の力学が大きく変容していく中で、国際ルールをどう定め、いかにして、新たな国際秩序を形成していくのかという課題が浮き彫りになっている。
ここ数年の動きについてみると、現在のG7内部では、「G7 vs中国」ともいうべき構図が出来上がりつつあるように思う。もちろん、利害が重なる分野においては、中国と一定の協力姿勢が示されてはいるものの、今年のG7では、米バイデン大統領は米中関係を対立構造の中で捉え、英ジョンソン首相も「D11」を唱えることで民主主義陣営の拡大を図ろうとしていた。さらに今回の首脳宣言では、初めて台湾についても明記されるなど、この構図が従来よりも一層鮮明化したといえる。加えて、G7は本年12月に英国で開催されるG7外相会合にあわせて、ASEANとの拡大会合も予定している。これも中国を念頭においたものだろう。他方、これらの動きは見方によっては、G7が束にならないと、中国に対抗できないというメッセージにもなりかねず、注意が必要だ。また、中国に対するスタンスもG7内部でバラつきがあり、危機感の強い日米英に比べ、中国との経済関係が深い独仏は慎重な姿勢を維持している。
こうした中、今、G7において日本に期待されている役割は何であろうか。日本は初回会合から参加しており、自由民主主義国のリーダーの一翼を担い、安定した国際秩序の形成に向けて取り組んできた。G7が対中国の文脈で団結しつつある状況の中で、日本がすべきことは、他国との調整力を磨きつつ、自国の国益を超える「地球益」を見据えた、想像力豊かな外交政策ではないか。その際、まずもって重要なのが、「正確なアジア認識の普及啓発」である。現在、中国が軍事的・経済的にもその規模を拡大させているが、その対中認識には国ごとにギャップがある。それは、物理的距離や文化的距離、あるいは政治・経済的結びつきの強弱などによって異なる。日本はG7において、唯一のアジア参加国であるとともに、中国とは隣国関係にもある。その意味では、アジアの窓口としての日本に対するG7からの期待はまだまだ大きい。日本はその期待に応えるべく、正確なアジア認識の普及啓発を行うとともに、たぐいまれなる「交渉力」を最大限発揮させ、G7の議論をまとめるべきである。そして、アジア・インド太平洋を含めた広い視野からの能動的な政策展開が急務である。
奇しくも、昨年、日本国際フォーラムは、「日本のハイブリッドパワー」という研究会を立ち上げた。本研究会では、従来の定量的な国力指標に加え、非定量的な国力指標を導入しつつ、日本が行使しうる「ハイブリッドパワー(複合型国力)」のあり方を模索し、日本の国家ブランド強化を図るべく、議論を重ねている。私も副査として参加し、トラック2の立場から日本外交をサポートできないか、我々が有する世界規模のシンクタンクネットワークなども活用し研究を実施している。今、我々にできることを精一杯取り組むとともに、今後の岸田外交の展開に注目したい。
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