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2022-02-03 00:00
膨張する日米の国防予算
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
アメリカではこのところ国防予算が増加している。日本では長く対GDP比1%以内という不文律が守られてきたが、それが反故にされて、防衛予算の倍増ということも検討されているようだ。2020年のアメリカの実質GDPは約18兆5000億ドル、日本円にすると、約2050兆円である。日本の実質GDPは約525兆円である。アメリカの国防費の対GDP比は、約4.3%となる。日本は1%以下の状態が続く。先進諸国は2%内外となっている。G7諸国の平均は1.7%、G20諸国の平均は2.1%程度となっている。NATO加盟諸国の平均は1.6%、EU諸国の平均は1.4%程度だ。ロシアは3.9%、韓国は2.4%、中国は1.9%となっている。
ドナルド・トランプ前大統領は、NATO加盟諸国の防衛費引き上げを求め、「各国が2%程度にまで引き上げねば、アメリカ軍を引き揚げさせる」と脅した。これは日本にも同じ要求がなされ、日本の防衛予算の対GDP比2%まで引き上げるように求められた。民主党のジョー・バイデンに大統領が代わっても、これはアメリカにとっての利益となるので、対GDP比2%の要求を取り下げることはない。また、5年間で1兆円を超える規模の思いやり予算(host nation’s support)という「上納金」の更なる増額もアメリカは狙っている。
日本の場合、GDPが増加することは難しくなっていく。そうなれば、対GDP比1%以内という不文律があると、防衛予算は縮小していく。日本の現在のGDPが約525兆円であるが、これでは1%で約5兆2500億円程度ということになる。それが500兆円程度となれば約5兆円となる。「マイナス成長」という奇妙な言葉(実際には縮小)の時代となれば、日本の防衛予算は減少せざるを得ない。現在の5兆円程度を守るためには対GDP比1%以内という不文律を撤廃しなければならない。
そこに、アメリカから2%にせよという「ガイアツ」がかかった。それに渡りに船とばかりに、「2%までにしましょう」という声が自民党内から上がっている。日本のGDPがこれから減少し続けても、防衛予算は減らさないように、いやもっと増加させるように、このような措置が取られることになる。しかし、タガが一度外れると、見境のない膨張が待っている。それは歴史が証明している。
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