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2022-02-22 00:00
ワクチン推進政策とそのハレーション
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
コロナウイルス禍になって2020年からすでに3年目に入っている。日本に「ダイヤモンドプリンセス号」を通じて日本にコロナウイルスの問題が(ウイルスではない)入ってきてちょうど2年くらいたったということになる。この間、初めのうちは「人流を断つ」つまり、人と人の接触を極力少なくするという対策に出た。今から考えれば、春節の中国人がツアー客で日本に入り、その中国人観光客を乗せた観光バスの運転手が観戦したのが、確か日本人の国内幹線の第一号ではないかと記憶する。それから国内ではかなり抑えていたが、今から考えれば、それほど問題とはなっていないほどの感染者数で4月に緊急事態宣言を発出したのである。さて、その頃からであるが「コロナウイルスはただの風邪」というような意見が出てきていた。その後2020年の年末くらいからワクチンという話が出てきて、菅内閣の中では、ワクチンの接種を何よりも優先するというような形になった。私もそうではあったが、アレルギーが強い人などはワクチン接種で副反応が出る場合が少なくない。もちろんアレルギーのない人も、副反応がしばしば出る。一方、ワクチンを接種済みであれば感染しないなどという心構えの為に、マスク忌避や妄りな接触で感染が広がるケースもあっただろう。片方で「ブレイクスルー感染(ワクチンを2回接種したうえでオミクロン株などに感染する状態)」が出ているにもかかわらず、片方で「ワクチンを撃たなければ外出や入場、入国を認めない」というような「ワクチン義務化」ということが行われている。そもそも、ワクチンは「重症化させない」ためのものだ。感染そのものを十分に防ぐものではない。そのように考えれば、「ワクチンの義務化」というのはだれのために行われたものなのであるか。その辺のことが今一つ見えてこない。それを決めた政治は誰のためにあるのか。
北米に目を向けると、カナダでは「ワクチンを接種していないトラック運転手の入国を禁止する」という政策が実施され、そのために経済的に困窮した陸運業の従事者たちが道路を封鎖するなどの強硬なデモに出て政府と衝突した。一方で、ワクチンを接種していない職員の解雇を判断したニューヨーク市職員の問題も報じられている。あえてここで言っておくが、私はワクチンの効果を否定するつもりはない。また、一方で、ワクチンの接種で強い副反応が起きうることも事実である。アレルギー体質の人など健康上の懸念事項がある人々にとっては、接種した場合に重症化、場合によっては命を失う危険があるから、接種を控える人が出てきてもおかしくはない。要するに「ワクチン」というのは、自分の体の事なのであって、そのことは、自分の判断で行うべきものである。もちろん、ワクチンそのものの陰謀論に与するつもりはない。まあ、そのような陰謀論が好きな人は好きにしてくれればいい。しかし、逆に政府によって「ワクチン接種を義務」にするというのはいったい何なのであろうか。もう一度言うと、ワクチンというものは「滅菌剤」ではない。ワクチンを接種しても感染はするし、また、口や鼻からウイルスは入って来るということになる。つまりは、保菌者になり、また第三者に感染させてしまうことが十分にありうるということになる。では、片方で「感染者数」を大きく報じ、一方でワクチンそのものを義務化するというのはどういうことなのであろうか。
ニューヨーク市の職員に対してワクチン接種を義務化するということは、市役所に来る人が感染していた場合に、市役所の人が重症化する人が少なくなるということに過ぎず、全体の感染者数が減るわけではない。ニューヨーク市の職員が保菌者ではないという保証にはならず、市役所内でクラスターが起きないという保証にもならない。市役所の職員だけが重症化しづらく感染し発症しても復帰しやすく、また組織として継続しやすいというだけなのである。この事はカナダでも同じであろう。義務化すること防疫上の利益とそれによって生じるハレーションの均衡は取れているのだろうか。医学的に保菌者ではない証明がなければ入国することができないというのであればまだわからないではないが、それも検査結果が出るまで国境で待たなければならないということであり、交通政策上あまり現実的ではない。では、カナダの政治家がこの政策を推し進めたのはなぜなのであろうか。政治は何を目指しているのか。
日本に話を戻そう。現在でも第5波のあと、どうして感染者が著しく減ったのかがいまだによくわかっていない。現在も目下感染爆発が起きているために当時のことはもはや一般に論じられることは殆どなくなってしまったが、ワクチンの感染と保菌者、重症化のメカニズムがわかっていないのである。確かに、今日、希望者にはワクチンがいきわたり、重症化する人は少ない。そのため、感染者数に反して重症化病棟の空きがまだ少し余裕がある点に着目してワクチン接種を推し進めるという説明はよくわかる。しかし、一方で、「第6波の鎮静化」のためにワクチン接種を強力に推し進め、そのために社会的な圧力が生じるのは、いかがなものであろうか。同時に、野党やマスコミが政府を追及しても、その追及が科学的に正しい根拠によって行われているのか担保されているとはいえまい。まさに「船頭多くして船山に登る」の言葉のとおりであり、本来実質的な課題解決のために何の政策を実施しなければならないのかということが政治家の手腕として重要であり、そのことをしっかりと政治家たちは考えるべきである。政治とは本来そのようなものではないのか。それを間違えたカナダやニューヨーク市などの為政者たちは、デモが発生し、もともと「経済を守る」ためにやった政策で、デモ隊が経済を破壊するという「元も子もない」状態になってしまったことを真に省みるべきであり、強い言葉で排除や抑え込みをアピールするだけでは見当違いである。日本の政治は、どうなるのか。
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