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2022-02-23 00:00
(連載1)核を放棄したウクライナの悲劇
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
ロシアのプーチン大統領は、2月21日旧ソ連領であったウクライナの東部の一部を実効支配する親ロシア派武装勢力「ドネック人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を一方的に国家承認する大統領令に署名した。プーチン氏は両「共和国」からの要請という形で、ロシア軍を「平和維持部隊」の名目で親ロシア派支配地域に派遣することを国防相に命じた。
ロシアによる独立の承認とロシア軍のウクライナへの派兵は、ウクライナの主権と領土の保全を侵害する独立国家に対する「侵略」であり、国連憲章第2条の「国連行動原則」にも違反するものと言えよう。今回のプーチン大統領による独立承認とウクライナへの派兵には、ロシアと国境を接するウクライナのNATO(「北大西洋条約機構」)への加盟を阻止する意図も考えられる。しかし、このような意図よりも、旧ソ連崩壊を屈辱と考えるプーチン大統領の真の意図は、旧ソ連領であったウクライナやグルジア、バルト三国等を含む旧ソ連の領土を取り戻し、ロシアの版図を回復し、「偉大なロシア」を再興したいとの野望が大きいと筆者は考える。2008年の「グルジア侵攻」、2014年の「クリミア併合」もその一環と言えよう。そうだとすれば、今回の「侵攻」で狙っているであろう首都キエフを含むウクライナ全土のロシア領への編入だけで済む問題ではないと考えるべきである。
今回のロシアによる「ウクライナ侵攻」の背景には、中国による「台湾有事」や「南シナ海問題」への対処など、「クアッド」や「AUKUS」等の枠組みにより、対中国に軍事力等を集中せざるを得ない米国バイデン政権の、対ロ軍事的弱体化があると筆者は考える。さらには、近時、ロシアや中国が相次いで開発した迎撃困難な極超音速弾道ミサイル兵器の影響もあろう。このため、バイデン政権はロシアに対して軍事オプションの選択肢はなく、「経済制裁」しか発動できないのが現状である。
「経済制裁」は2014年の「クリミア併合」でロシア側も織り込み済みであり、最近の原油高もあり、影響は限定的と言えよう。もちろん、米国は、ウクライナがNATO加盟国ではないため直接の対ロ軍事オプションは困難である。しかし、これまで、ロシアによる「クリミア併合」後の米国のウクライナに対する兵器等の援助は8年間で総額25億ドルにとどまっており、今回の「侵攻」を考えると、対ロ抑止力として不十分であったと言えよう。(つづく)
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