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2022-02-24 00:00
(連載2)核を放棄したウクライナの悲劇
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
今後、ウクライナがロシアの侵略から主権と領土と国民を守るために、筆者は二つの対応策を考えている。第一は、永世中立国スイスのような、ウクライナの「永世中立化」である。これはロシアにとっても安全保障上有益であろう。国連が関与し、米英ロ独仏中を含む関係諸国が、ウクライナの永世中立を保障し承認する「永世中立条約」または「永世中立協定」を締結するのである。中国も1999年にウクライナから空母「遼寧」を約2000万ドル(約24億円)で購入しており、貿易や「一帯一路」を含め深い関係にある。
第二は、第一が困難な場合は、米国によるウクライナへの「核持ち込み」である。これにより一定の「核抑止力」を獲得したウクライナに対しては、核大国のロシアといえども、ウクライナへの侵略は著しく困難となるであろう。なぜなら、ロシアの首都モスクワとウクライナの首都キエフの直線距離は758キロであり、モスクワは「中距離核弾道ミサイル報復攻撃」の完全な射程圏内となるからである。
今回、ウクライナがロシアから「軍事侵攻」を受けた最大の原因は、ウクライナの「核放棄」にある。1991年にソ連が崩壊しウクライナが独立した際に、ウクライナは、1240発の核弾頭と176発の大陸間弾道ミサイルという世界第3位の核兵器を保有していた。しかし、ウクライナは、核不拡散と核独占を狙う米国・ロシアから核の放棄を強要され、ウクライナの独立・主権・安全を保障する1994年の「ブタペスト覚書」と引き換えに核をすべて放棄し、ロシア側に引き渡した。このため、ウクライナは隣国の核大国ロシアに対して一切の「核抑止力」を失い、その結果、2014年の「クリミア併合」、さらには今回の「ブタペスト覚書」を反故にする「軍事侵攻」に晒されているのである。
もし、ウクライナが核を放棄していなければ、「クリミア併合」も今回の「軍事侵攻」もなかったであろう。なぜなら、ウクライナによる対ロ「核抑止力」が働くからである。その意味で、今回の事態は、まさに核を放棄したウクライナの失敗であり悲劇である。日本は、他国とはいえこの教訓を肝に銘じ、「核抑止力」を含め、最後は「自分の国は断固として自分で守る」勇気と覚悟と英知を持つべきである。(おわり)
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