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2022-03-19 00:00
(連載2)ウクライナ侵略の教訓・抑止力なき国は侵略される
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
核不拡散条約第10条は異常な事態が発生し自国の存立が危機に陥った場合の「脱退」を認めている。今後、日本がいかなる安全保障環境のもとにおいても、国是とされる「非核三原則」を何が何でも順守して肝心の国が滅びれば、本末転倒である。
今回のロシアによるウクライナ侵略に関して、共産党・志位委員長は、他国に侵略しないように指導者を縛る条項が憲法9条だとツイッターに投稿したとされる(3月13日付「産経新聞」参照)。確かに、憲法9条の「戦力不保持・侵略戦争禁止条項」は侵略する側には有効かもしれない。しかし、そのツイートに対する数多の反論リプライが示すように、侵略される側に有効でないことは明らかである。国の安全保障(「抑止力」)を完全に無視した極めて無責任な「憲法9条信仰」と言うほかない。
今回のロシアによるウクライナ侵略の教訓は、戦争「抑止力」なき国は他国から侵略される危険性が常にあるということである。ウクライナは旧ソ連崩壊により独立し、米国、ロシアに次ぐ世界第3位の「核保有国」となったが、1994年の米国・ロシア等による主権と安全を保障する「ブタペスト覚書」を信用して核兵器をすべて放棄した。このため、ウクライナはロシアに対する「核抑止力」を完全に失った。そのうえ、ウクライナはNATO未加盟国であり、通常戦力においても「抑止力」が十分ではなく、ロシア軍の攻撃には到底対抗できないとロシア側が判断したため今回の侵略を誘発したことは明らかである。すなわち、ロシアはウクライナを彼我の戦力差が不均衡な「力の空白」と判断したから動けたに過ぎないのである。
したがって、もしもウクライナが、今も一定の「核抑止力」を保有し、通常戦力においても一定の「抑止力」を保有していたならば、「力の空白」はないから、今回のロシアによる侵略はなかったと考えるのが合理的である。日本はこの国際社会の厳しい現実を最大の教訓とし、「抑止力」の重要性を肝に銘じ、「力の空白」を作らないため、常に戦争「抑止力」の強化向上を怠ってはならないのである。(おわり)
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