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2022-03-24 00:00
(連載1)ゼレンスキー国会演説が示したもの
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
昨日、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領がビデオ映像(生中継だったそうだ)で日本の国会議員たちを前にして演説を行った。国会議事堂の本会議場ではなく、議員会館の国際会議室とホールに映写設備を整えての演説となった。全体として具体的な要求はほぼなく、総花的なものとなった。
私がまずとても違和感を持った、と言うよりも嫌悪感を持ったのはゼレンスキー大統領の演説後の山東昭子参議院議長の芝居がかった(三文芝居そのもの)スピーチだった。山東議長はお勇ましい言葉を並べ立て、「(ゼレンスキー氏が)先頭に立ち、貴国の人々が命をもかえりみず祖国のために戦っている姿を拝見し、その勇気に感動している。一日も早く貴国の平和と安定を取り戻すため、私たち国会議員も全力を尽くす」というような内容の発言を行った。ウクライナ国民が「命をかえりみず」戦い、亡くなっていることに感動しているということを日本の政治家が述べたことに私は嫌悪感を持つ。
彼女の言葉に亡くなっていった人たちへの哀惜の念や、戦争を一日も早く止めるべきだという考えは全くなかった。いざとなれば政治家たちは安全な場所にいて、国民を鼓舞して「国のために」死ねと命令する。私はこういう不安定な時期に、その人の地が出ると思う。このような他国の戦争を利用して、日頃は存分に言えないお勇ましい発言をここぞとばかりに言うような人間は最低だ。山東昭子という人物は非常に危険な人物であり、「良識の府」と言われた参議院の議長には全くもって不適格な人物だ。このような人物が政治家で、このような人物を「感動させる」ために、国家存亡に際して国民は何をさせられるのか、分かったものではない。このような政治家たちを「縛る」ために憲法があり、私は現在の憲法を変更する必要はないと考える。
ゼレンスキー大統領の演説は総花的で、日本を非難することもなく、過度に持ち上げることもなく、日本側にとっては穏やかに終わった。恐らく、相当な根回しがあっただろう。それでも、原発への言及、サリンという言葉、核兵器使用という言葉、侵略の津波という言葉、今も家に帰ることができない人々がいることへの言及など、日本政府や自公政権にとっては言って欲しくなかった表現もあった。ウクライナ側はこうした言葉を嫌がらせで使う意図はなかったと思う。日本国民に訴えやすい言葉として選んだのだろうが、それが日本政府にとっては痛しかゆしということになった。(つづく)
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