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2007-10-11 00:00
わが国にも「学歴」格差を!!
鈴木智弘
信州大学経営大学院教授
福田内閣が発足し、「再チャレンジ」を担当する大臣がいなくなった(岸田文雄特命担当大臣の特命事項から消えた)。安倍内閣の下で、今年度から、社会人を対象とする「再チャレンジ支援プログラムによる授業料免除制度」が導入され、私の大学院も、その指定を受け、何人かの社会人学生が授業料免除制度の恩恵を受け在学している。地方国立大学の財政面の悲惨さは報道の通りであり、社会人学生に独自の奨学金を与える余裕は少なく、また、賃金上昇は鈍いため、この制度が廃止されれば、社会人の進学が困難になるのでは、と心配している。
一方、文科省は、各国から優秀な人材を集めるために重点的な研究環境整備を行う拠点として5機関(内4つは大学)を指定した。また、東京大学は、欧米や中国の一流大との“頭脳獲得競争”が激化する中、国内外の優秀な学生を招くため、来年度から大学院博士課程に在籍する学生(約6000人)の授業料負担を実質ゼロにする方針を固めたと報道された。このような動きは、大学間の役割分担(国家による選別)なのか、格差なのか、立場によって見方は異なろう。
7月の参院選のキーワードは「格差問題」であった。どのような「物差し」で測るのかによって、格差の所在は異なる。特に、格差の国際比較は、国によってデータの取り方が異なるため、容易ではない。そのことを前提とする議論であるが、学歴と賃金の関係(大卒と高卒の賃金格差)について国際比較を行うと、米国では、大卒男性と高卒男性は2倍以上の格差があるが、わが国では、20%程度の違いであり、女性では、10%程度の違いでしかない。また、わが国では、新卒者の初任給は、学校名あるいは学校時代の成績で異なることは、ほとんどなかった。一方、米国や中国では、学校名、成績あるいは在学中に取得した資格・外国語力の違いによって、新卒の初任給は異なる。特に中国では、高学歴を得ることで貧困から脱出しようと、本人だけでなく家族を挙げて進学熱が過熱している。
わが国では、大学のレジャーランド化が言われて久しいが、卒業後の賃金で見る限り、わが国では大学に行くことや、好成績を取ることのメリットが乏しい。人材獲得がグローバル化する中で、わが国の賃金制度も変化が必要であり、その第一は、「学歴」による格差を付けることであろう。ただし、「学歴」とは、文字通り、何を学んだのかであり、「大学名」ではない。そのためには、採用する企業も、採用基準を明示することが必要であり、また送り出す大学も「教育」内容を再検討しなければならない。特に大学は、先人が苦労して獲得した「学問の自由」を楯にして旧態依然のままであれば、当局から予算を人質に目標管理と称して表面的な数値主義を押しつけられ、結果として真の意味での学問の自由を奪われてしまうであろう。
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